さて、前回は「ポジティブな出来事を十分味わうこと」をお伝えしました。
今回は、ポジティブな感情を会話の中に含めることの意味を考えたいと思います。
ちょうど、先日アサーション講座にご参加いただいた方から、こんなご質問をいただきました。
「アサーションでは、『困っている』とか『心配している』とか、ネガティブな感情を表現することが多いですが、『嬉しい』や『楽しい』といった前向きな感情を表現することが効果的な場面はないのでしょうか」というものです。
確かに、アサーションの練習では「自分が抱えている問題を相手と共有して協力を仰ぐ」という状況が多いため、どうしても問題に付属するネガティブ感情が多く登場します。
前述のほか、「辛い」「ショックだ」「胸が痛い」「ヒヤヒヤした」など…これらの感情は、状況に関するインパクトを端的に表現することができます。
「こうなることが不安です」と伝えれば、一緒に対策を練ってくれるかもしれません。「こうされると怒りを感じます」と伝えれば、やめてくれるかもしれません。「こうなってしまい悲しんでいます」と伝えれば、いたわってくれるかもしれません。
こんなふうに、ネガティブな感情は、あなたが直面している状況への共感を呼び、相手の行動を引き出すことにつながるため、言葉にして伝えることがとても大事です。
そしてこれはポジティブ感情も同様です。実は問題をめぐる状況には、ポジティブな感情が含まれていることがよくあります。
「たくさん仕事を振られてしまう →任されることは嬉しい」
「次々と高いハードルを課される →やり遂げる達成感はある」
「飲み会が頻繁にある →参加すれば楽しい」
これらのポジティブな感情があるからこそ、あなたも問題提起するべきか迷ったり、面と向かって伝えるのを避けてしまいがちになるのです。
そんなときは、これらのポジティブ感情を含めて、会話をしてみましょう。
「私を頼って任せてくれることは嬉しいです…でも、最近は正直しんどくて」
「もちろん達成感はあります…でもそれ以上に疲れてしまいました」
「私も参加すれば楽しんでいます…ただ、頻繁になると困ってしまって」
このようにポジティブな感情が含まれることで、より一層あなたの気持ちが正確に伝わりますね。
これは状況をめぐるさまざまな感情を認めながらも、「でも今この感情を大切にしたい」というあなたの選択を伝えることにもつながります。
ネガティブな感情もポジティブな感情も、あなたの気持ちの大事な一部です。
どちらも一つ一つ言葉にしながら、わかりあう助けにしていきたいですね!