皆さんはセルフ・コンパッションという言葉はご存知でしょうか。
心理学の世界で最近よく耳にする言葉で、世間的にも注目が集まっており、2019年には日本語版ハーバード・ビジネスレビューでも「セルフ・コンパッション」の特集が組まれています。
私自身知ったのはここ数年の話ですが、知ってからはとても好きな言葉になりました。
セルフ・コンパッション(self-compassion)は「自分への慈しみ,自分への思いやり」という意味です。
特に、仕事で失敗をした、周囲の人間と衝突してしまった…といったうまくいかない、困難な状況においても、自分を批判するのではなく、自分に優しい気持ちを向けるというところがポイントです。
例えばあなたが準備を重ねて臨んだプレゼンで、予想外のトラブルが生じ、焦ってしどろもどろになり、終わった後に聞かされたコメントは辛口ばかり…ということがあったとします。
そんな時、私たちはすかさず「自己批判」を始めますよね。
「何でこういうことが起こることぐらい予想ができなかったんだろう!」
「余計なことをたくさん言ってしまった!すぐ冷静になるべきだったのに…」
「他の人はこれぐらいのこと、うまくやっているのに…」
こんなふうに自分に厳しい言葉を向けると、自分のふがいなさに対して腹を立てることになり、怒りや落ち込みを抱えることになります。
また、「うまくやっている」と思われる他人に対して嫉妬の気持ちが生じ、その人に辛く当たってしまったり、またそんな感情をもった自分に対してさらに恥ずかしさや自己嫌悪を覚えたり…といったことになります。
自分に対して辛く当たるということは、自分を鼓舞するはずが、かえって困難に立ち向かうエネルギーを内側から奪い、削り取っていくようなものです。
そこで、失敗や挫折などに直面したときは、批判的になる代わりに、自分に思いやりを向けてみましょう。
「えっ、そんなのできないよ!(今までさんざん辛く当たってきたし…)」という人は、他人に思いやりを示すときのやり方を思い出してみてください。
私たちは、もし自分の大事な友人が打ちひしがれていたら、理解と共感の言葉をかけますよね。
「一生懸命がんばったのに、残念だったね……」
「いろんなことが立て続けに起きて、大変だったね」
「あなたも人間だもの、失敗しちゃうことだってあるよ」
など、その人の辛さをなんとか和らげてあげたくて、自然と寄り添うような言葉をかけられるのではないでしょうか。
そうしてその友人は、気遣われたこと、大切に扱われたことで、心のざらつきが癒され気力を取り戻していくことができます。
こんなふうに、自分自身の優しい友人、理解者になってみましょう。
私が普段、講座でお会いする皆さんは、仕事に対して熱心で責任感が強く、他の人への配慮を欠かさず、献身的で思いやりにあふれている人ばかりです。
でも一方で、自分に対してはとても厳しい方が多いのです。
困難な状況が続く中では、いつか疲れ果ててしまわないか心配です。
ぜひ、セルフ・コンパッションを高めること、始めてみてくださいね!