さて、先日コーチング研修を行ったとき、改めて感じたことがありました。
「相手役の困っていることを聞き、どうしたらいいか一緒に考える」という設定でコーチングを練習するのですが、そこでよく陥る悪循環が、「コーチ役がアドバイスをどんどん出しては、相手役に受け付けてもらえない」というパターンです。
相手役の方が、自分の困りごとを話し出すと、コーチ役の方は話を聞くのもそこそこに、自分が思いつく限りの「これはやったの?」「こうしてみては?」というアドバイスを矢継ぎ早に出してしまうのです。
そのようなやり取りが続くと、相手役の方はだんだん表情が固くなっていき、「そうですね…」と同意しながらもなんだか実感のこもらない返事を返すようになっていきます。または「いや、それはこうだからできないんです」という否定の言葉が返ってくるようになります。
こうなってくると、コーチ役は「こんなに問題解決しようと、一生懸命考えているのに!なんで響かないんだ…」と焦ってしまいます。相手のためを思って解決策を提示しているのに、受け取ってもらえないというジレンマは、なかなか苦しいですね。
そんなときに少し思い出してほしいのが、「そのことについてずっと悩んできたのは目の前の相手だ」ということです。他人が聞いただけでパッと思いつくようなアドバイスは、当の本人はとっくの昔に試していることだったり、そうしたくてもできない事情があるからやれていないのです。言い換えれば「そんなに簡単に解決されたくない」のです。
皆さんでも、自分がずっと悩んできたことに、他人から「こうしたらいいよ!」と気軽に言われると、ちょっとムッとしますよね。「そんな簡単なことじゃないんだ!」と。なので、アドバイスというのは(たとえそれが的を射ていたとしても)よくよくタイミングを見極めないと、届きにくいものなのです。
ええ~、じゃあどうすればいいの?まずは「自分がなんとかしなきゃ!」という気持ちをいったん横においてみましょう。そして、目の前の相手がどれだけ頑張ってきたか、そのことに気持ちを合わせてみましょう。
逆に自分がまだその人の苦労がよく実感できていなければ、もっと聴き手に回る必要があります。「それは本当に大変でしたね…」という言葉が自分の中から自然と出てくるまで、よくよく耳を傾けてみましょう。そこで初めて、相手役の方は「私がどれだけこのことに苦労してきたのか、わかってくれた!」と感じ、コーチ役に心を開きたくなるのです。
そうして二人が同じ目線に立ってからであれば、「今あなたのお話を聞いていて、こんなことが胸によぎったのですが…」と提示したアドバイスも、「そうですね…!」と受け取ってくれるかもしれません。
まずは気持ちを十分に受け取って、それからの解決策検討です。人間関係全般にも、ぜひ活かしてみてくださいね!