●守破離とは
「守破離」とは、実は、600年前から日本で伝わっている言葉です。能の世界で、観阿弥の弟子である世阿弥がまとめた書物「風姿花伝」(「花伝書」ともいわれる)の中で、この「守破離」という考え方が出てきます。先代からの教えを守り、次にそれを破り、離れていく。
今回は、この「守破離」をプロジェクトマネジメントの世界でどのように実践してプロマネのスキルを高めていくかについて話を進めていきたいと思います。
●Project Managementにおける「守破離」の世界
この守破離の考え方は、プロジェクトマネジメントにおいても適用できる成長プロセスといえます。
Process1 「守」
まずは、「守」である。教えられた型を徹底して学ばなければならない。型を覚え、そこから型の意味を学んでいきます。スキルを「習得する」とかいうのは、この段階を指す言葉で、ここでは学ぶことが重要である。型を学ぶ方法は一つではない。
プロジェクトマネジメントでは、PMBOKの型を覚え、PMPの資格を取るというのも一つの方法かもしれませんが、PMBOKに拘る必要はない。例えば、小生も、あるプロジェクトで、お客様が企業標準として実践されていたプロジェクトマネジメントマニュアルから多くの型を学ぶことができました。また、自分の周りでロールモデル(Role Model)となるPMの達人を見つけて学ぶ方法もある。あるプロジェクトで、お客様のPM部長が経験豊富でPMコンピテンシーが高かったので、その部長をロールモデルとして、プロマネの心構えや、行動パターンを学ぶことができました。
Process2 「破」
次の「破」はその身に付いたスキルを使って、行動をすることです。PMBOKという箱(PM体系)に閉じ籠っているだけでは、型を破ることはできない。箱から出て、自分なりの創意工夫を行い、自分のマネジメントスタイルを構築していくことが必要になる。
プロジェクトマネジメントでいえば、型を覚え、実際にやってみる中で、現実に合わないところがあれば、変えていく。
たとえば、ツールを変えることや、プロセスそのものを破ることも「破」だといってもよい。ある病院のプロジェクトを担当した時、ステークホルダーが多かったため、従来のやり方であるアンケートやインタビューでは、期限内にステークホルダーの要求事項を纏めることが困難であった。そこで、代表者数名からなるW/Gを編成して、要求事項を取り纏めたことで、期限を守ることができた。また、あるプロジェクトで、3次元CADであるダッソー社のCATIAによる設計支援システム構築のプロジェクトで、大量のバグが発生した時、メールのやり取りでは、問題解決までに多大な時間がかかっていたが、ダッソー社とのHOTラインを構築することで大幅な時間短縮が達成できた。このように従来のプロセスを変えることで、プロジェクト成功につながったケースもある。ここで重要なことは、実際に変えてみたときにどのようなことが起こったかをしっかりと観察し、型の持つ意味をしっかりと理解することだと思う。それが上手に型を崩すことに繋がっていく。
Process3 「離」
そして、「離」は型から離れて自由自在に行動すること。
自分独自の持論を持つことや、新しいフレームワークを創造し、自在に操り、独自の価値を創出できるようになるのが「離」の状態です。
即ち、型にとらわれず、自分独自の境地を開いていくことになる。
ここではじめて、「PMBOK超え」が出来る。
まさに、この守破離のプロセスを回していくことにより、プロジェクトの成功確率を上げて、「できるプロマネ」に成長することが肝要です。
日本では武芸に限らず、多くの分野で「道」の一字が加えられます。例えば、武士道、茶道、華道等です。プロジェクトマネジメントも、「守破離サイクル」を回し、プロマネが成長するプロセスを「プロジェクトマネジメント道」と呼べるのではないかと思います。
Tip of the day
●Project Mgt=守破離の世界
●「出来るプロマネ」は「守破離のプロセス」を実践する
●「守破離のプロセス」を実践すれば、百戦危うからず