すでにインターネットが使えて当たり前の昨今、逆に使わない日はないくらいの毎日です。
このインターネットの仕組み、もともとはアメリカにおける軍の通信網の整備から始まってきた歴史があるのをご存じの方もいらっしゃるでしょう。そんなインターネット時代以前。軍の運営するネットワークに、街の高校生が電話線経由で侵入したことから、米ソ核攻撃の応酬に迫る!という状況に陥るかという映画。今回はこれを題材にしたいと思います。
高校生の主人公デビッドは、コンピューターについては天才的な能力を持ち、学校の成績がたとえ悪くとも、自宅から学校のコンピュータへ電話線経由で侵入して、自分の成績を書き換えればなんてことはない、と高をくくる日々。
そんななかで、当然、自分の高校のシステムに侵入するだけでは面白くないので、様々な会社のネットワークへの侵入を試みます。そんな中で、未発表の製品情報を見つけ、その中に仕込まれている、三目並べ、チェスなどとともに、「アメリカとソ連の核戦争シミュレーション」をみつけて大興奮。2020年代の今でこそ、様々なゲーム機器やPCでもシミュレーションゲームというジャンルが確立していますが、1980年代初頭では、そんな(当時としては、コンピューター上に再現するには複雑すぎる)ゲームは、ボードゲームで、サイコロを振って遊べるのが関の山。当然試してみたくなるわけです。…がしかし、それは単なる会社の未発表製品ではなく、実は、アメリカ軍が開発した核戦争シミュレーション用AIだったのです。
軍としては、まさかハッキングされるとは思っておらず、ゲームスタートと同時に現実の事態として一気に臨戦態勢に。しかし他の現場情報などと突き合わせてみると整合性がつかず、シミュレーションだと認識。アクセス元の高校生主人公デビッドはソ連のスパイの嫌疑をかけられ、当然つかまります。
と、これで事態は収拾されると思っていたのですが、その人工知能としては、それでゲーム(シミュレーション)が終了ではなく、自らアメリカの防衛体制を引き上げ、(シミュレーション上のソビエトからの)攻撃に対抗すべく、現実の核ミサイルの発射コードを解読し始めます。そう、コンピューターからすればシミュレーションであれ、このままミサイルで応戦しなければアメリカが滅亡してしまう。なんとしてもミサイルを発射せねば!と、このままでは現実のソビエトに核ミサイルを撃ち込むことに!
さて、映画はさておき現実の仕事で考えてみると。実際に、ここまでの壮大なシミュレーションは行っていない方がほとんどではあると思いますが、「もしもこんなことが?」と考えることはないでしょうか?そう、いわゆるリスクの洗い出しなどとして実施されているであろう手順。起きてしまったらどうなるかを考え、(たいていはそうなってしまうと仕事上に様々な被害をもたらすことが多いため)対処策を考える。
ただ、すべてのリスクに関して手が打てるほどの工数は、どこの現場も余っている可能性は低いわけですから、ついついいつも起こりがちな重要なモノだけを注視して、あとはおざなりになってしまうことにも。ですので、かならずそれぞれのリスクに関しては、それが起きた際の被害の度合い(インパクト)と、それが起きるであろう発生確率のかけ合わせたものを指標として検討する必要があります。インパクトが大きすぎるものでも、確率が極端に低ければ、プロジェクトでは扱いきれないようなものまでは管理不可能ですし、インパクトはあまりないものであっても、頻発するものであれば適切な対策が不可欠になるわけです。
この映画で考えれば、核ミサイルがアメリカの各都市に向けて発射されればインパクトは絶大ですし、(事実上シミュレーションなのですから)発射確率は極めて高い。となると、AIは絶対的に相手に負ける(殲滅させられる)わけにはいかず、こちらからもミサイルを発射せねばと対処に出るわけです。
軍の関係者はAIに支配されたミサイル発射システムを何とかしようにも手が出ません。さぁどうやれば止められるのか?
結末は映画でご覧いただければと思います。
この映画は制作上映されたのが1980年代初頭というところも一つのポイント。当時のソ連とアメリカの関係性が理解できていると、この映画製作の意図もつかめるのではないかと思います。
新型コロナのデルタ株が一段落したと思いきや、オミクロン株が猛威を振るいだしています。やっと映画館に行ける状況に戻ったと思ったのですが、逆戻り。安心して見に行けるにはもう少し時間がかかるかもしれません。しばらくは、ネット経由で、レンタルで、お楽しみいただければと思います。
それではまた次回に。