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第142回:扁桃体のハイジャック

ストレスをマネジメントしよう! 2022.09.26

ところで皆さんは、自分の立場を守らなければならない「ここぞ!」というときこそ「なーんか頭の回転が悪いなぁ」と思ったことはありませんか?

例えば会議で自分の発言を小馬鹿にされてしまったとき。
このままではあなたの立場がありません。
ひどく頭にきて、言い返したいのに、うまく言葉が出ずに単調な言葉ばかり繰り返してしまい、悔しい思いをしたこととか。

あるいは急に上司から自分の仕事ぶりを疑われてしまったとき。
このままでは誤解され、評価を下げられてしまいます。
強い不安に駆られ、きちんと弁明をしたいのに、言うべきことがちっとも整理できず、しどろもどろの説明しかできなかったこととか。

あとで冷静になれば、いくらでも筋道だって説明もできるのに、カーっときたり、不安に駆られているそのときは、頭がいつものように全然働いてくれないんですよね。

こんなとき、私たちの頭の中では何が起きているかというと、「扁桃体によるハイジャック」が起きています。

私たちの感情をつかさどる部分は「扁桃体」と呼ばれる、古い脳の一部です。
一方の理性をつかさどる部分は「前頭前野」と呼ばれる、新しい脳の一部です。

普段は「前頭前野」が私たちの思考や感情をコントロールしているのですが、本能的に脅かされるような状況(強い怒りや不安を感じる状況)が訪れると、脳が必要とする酸素などのエネルギー源は「扁桃体」に奪われてしまい、前頭前野にエネルギーが回らなくなります。

こうして扁桃体によって脳がハイジャックされたような状態になり、落ち着いて考えたり、ロジカルに説明したりすることができなくなってしまうのです。

これは相手の状態に関しても同様です。

カーっときている相手に何を言ってもこちらの言い分はきちんと理解してもらえないですし、ゆがんだ受け止め方をされてしまいがちです。

あるいは相手をビクビクさせてしまった状態では、端的に説明してもらうとか、もっといいアイデアを出してもらうなど、高いレベルのパフォーマンスは期待できません。

最近「心理的安全性」という言葉がよく言われますが、心理的安全性がチームのパフォーマンスにとって重要なのは、こんなあたりにも一因があるのではないでしょうか。

怒りを感じたり、ビクビク不安を覚えながら仕事をするチーム環境では、一人一人の脳内からしてうまく機能していない状態になっているわけです。

理性と感情の間で大事な資源の奪い合いが起きないように、安心して働ける環境を相互に作っていきたいですね!

2017年6月第79回:「強い感情に『ハイジャック』されるとき」もご参考に!)

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