さて、私がコーチングを行うときに、意識していることがあります。
それは「言葉になっていない気持ちを拾う」ということ。
コーチングのクライエントの皆さんは、まじめで頑張り屋さんな方ばかりです。
そうすると、仕事の悩みなどを話してくれていても、非常に「まっとう」なことを口にされることが多いんですね。
例えばうまくいっていない仕事に対して上司からアドバイスされた方針について、「まあ確かに指摘は正しいですし、そうしなきゃいけないんですけどね・・・」と口ごもる方。どうも浮かない表情です。
そんなとき私は、「・・・でもご自身では、そうじゃないんだ、と思うんですね…?」と口にしてみます。
そうすると、その方は「そうなんです、本当はやっぱりそんなやり方はしたくないんです」とおっしゃいます。
あるいはご自分を周囲とつい比較してしまい、自分の努力不足と考えている方が「もっと頑張らないといけないんですよね・・・」と、口先だけ動かすようにおっしゃるとき。これまた浮かない表情です。
そんなとき私は、「もっと頑張らなきゃ、と思いつつ、もうこれ以上頑張れないよ・・・と感じているんでしょうか」と口にしてみます。
そうすると、その方はハッとしたような顔をされて、「そうです、本当はこれじゃどこまで頑張ってもキリがない、と思うんです」とおっしゃいます。
こんなふうに私たちは、「~~しなければならない」という言葉で自分を縛りがちになります。気が向かないことも、「上司が言ったから」「そうしないと落伍してしまうから」など、いろんな理屈でもって自分を説得しようとします。
しかしこの表面上の、道徳的な観点に従って、自分をある方向に駆り立てようとしても、なかなかうまくいきません。
本心は「そうしたくない」「ちがうんだ」と反対のほうを向いているからです。
本心と一致していない行動は続かないのです。
なので、むしろ押し殺している気持ちを、言葉にして表に出してあげることが必要です。他人から「こうなのかな?」と言われて初めて、「そうそう、やっぱり私の気持ちはこっちだった!」と自分で受け入れられたりします。
こころと一致した行動は、その人に活力を取り戻させ、自分の選択に納得をもたらします。
皆さんも、メンバーや同僚と話しているときに、「こうしなきゃな・・・」と口にはしているものの、浮かない表情をしている人を見かけることがありますよね。
そんなときは、「でも本当のあなたの気持ちはこうなのかな…?」とそっと伝えてみてください。
そうすると、「そうそう、そうなんだよ!」とパッと輝く顔を見られるでしょう。
「言葉になっていない気持ちを拾う」、ぜひ試してみてください!