さて、私たちは日々生きていると、しんどいとき、うまくいかないときがたくさんありますが、そんなときに自分自身に対してどう向かい合っているでしょうか。
実は先月、急に風邪を引いてしまったことがありました。
「あれ、おかしいぞ?」と気づいたらあれよあれよと、すっかり寝込んでしまいました。
折悪しく仕事が立て込んでいた時期で、さらに運悪く次の週末は旅行の計画まで立てていたときだったのです!
そんなとき、寝込んでいる布団の中で、心の中は大忙しです。
「もっと体調管理に気を付けておけばよかった!」
「う~ん、熱があるって辛い・・・こんなに辛いのはおかしくないか?私だけじゃないか?」
「なんでよりによってこんなタイミングで風邪を引くんだろう…馬鹿だなぁ!」
「もうダメだ…仕事で迷惑をかけるし、旅行も丸潰れだ…」などなど。
自分の行動を悔やみ、孤独感に陥り、運の悪さを呪い、悲劇的な未来を宣告する・・・というものでした。
風邪を引いて辛い状況なのにもかかわらず、自分が自分に対して示す姿勢はかなりドライですよね。
もしこれが、同僚が見舞われた出来事だったらどう声をかけるでしょうか。
「身体、しんどいですね…」
「わかります、熱が出るって思っている以上に辛いですよね」
「病気になっちゃうタイミングは選べないですよ!」
「仕事はこちらでカバーしますから。旅行はまた次に行けばいいんですよ」
など、思いやりのある、温かい言葉を普通にかけるでしょう。
実際、同僚の皆さんからは次々にこういうふうに言ってもらいました。
ところが、それを「自分が自分に向ける」となったとたん、難しくなってしまいます。
私たちの心の中には、「自分に対して優しくしてはいけない」という強力な縛りがあるかのようです。
そんなことをしたら、「自分は甘えてダメ人間になってしまう!」という恐怖が根差しているかのようです。
でも果たしてそうでしょうか。自分に対して優しさを向けることは、自分をダメにしてしまうのでしょうか。
本当はそんなことはありません。
他人から優しさを向けられると、「また頑張りたい」と思うように、自分からも優しさを向けられたほうが本当は「また頑張れる」のです。
これは、「セルフ・コンパッション」という、「自分に対する思いやりの姿勢」として、近年注目が集まっている考え方です。
そして自分自身に思いやりを向けることは、自然にできることというよりも、一つの身に着けるべきスキルです。
私もこのコラムを書いていて、「そうだったなぁ、あのときセルフコンパッションを向けてあげたらよかったなぁ」と今更ながら振り返ります。
自分自身のよき友になる、これから一緒に始めていきませんか!
(「第120回:セルフ・コンパッション」もご参考に!)