アサーションを研修でお伝えすると、こんな意見が寄せられることがあります。
「アサーションでどう伝えるのがいいかはわかりましたが、日本のビジネス環境ではなかなか難しいのではないでしょうか?」というものです。
つまり「こんなにはっきり言えないよ!」という戸惑いですね。
「スキルは身に着けられるかもしれないけれど、それを使える気がしない」という抵抗感はよくわかります。
なにせ「思っていることを率直に表現しましょう」というメッセージは、私たちが親しんできた「言わぬが花」「沈黙は金」という日本文化とは異なりますものね。
そうなんです、アサーションは一つの「文化」を背負っているのです。
もともとはアメリカからスタートし、様々な人種やバラバラな背景の人々がうまくやっていく必要性に迫られたところから、育ってきた考え方です。
生まれも育ちも違う人々が「どうやったら分かり合えるか」を苦労して磨いてきたスキルであり、文化なんですね。
一方の日本は、比較的近いルーツや背景の人たちが集まっている集団でしたから、あまりはっきり言わなくても済み、コミュニケーションの量は少なくても相通じ合える関係でした。
「言わなくてもわかるでしょ」で成り立っていた関係だったわけです。
ですが日本でも、性別、国籍、年齢の幅、雇用形態、育児や介護などの家庭の事情、価値観など、一昔前に比べると働く人々の「多様性」は増しています。
多様な人が一緒に働いているにもかかわらず、従来通りの「言わなくてもわかるでしょ」「それぐらい察してよ」というコミュニケーションスタイルでやろうとすれば、困る人がたくさん生じてしまいます。
そのために「アサーション」というスキルが注目されだしたわけです。
しかし「言い方」というスキルだけが独立して活かせるものではなく、「きちんと言葉にしていこうよ」という自己表現を肯定する「文化」があってこそなのです。
そんなわけで、現在は「文化摩擦」の真っ最中とも言えるでしょう。
「はっきり言葉にするのはいかがなものか」vs「きちんと言葉にしてわかりあおうよ」というぶつかり合いが生じている時期なのです。
私個人の中でももちろんそういう文化摩擦はあります。
子どもの頃から慣れ親しんできた「角を立てない」やり方と、「言おう」という気持ちはしょっちゅうぶつかっています。
「以心伝心」が成り立つのはありがたいですし、他者への思いやりとしてやんわり伝えることも悪いばかりではありません。
さて、どうやって2つの文化を統合させていくか、一緒に考えていきませんか!