外注先を適切にマネジメントできず、プロジェクトが失敗するケースが様々な業種で多発しています。今回は、大手IT企業A社での海外外注先マネジメントの失敗ケースで何が起きたのか、そして、なぜ起きたのか考えてみましょう。
A社では、国内の大手製造業B社向け生産管理系システムの商品化を進めていました。
システムの開発/評価のコアな作業は社内で進める一方、国内外のソフトウェア開発委託先、ソフトウェア評価委託先を多用していました。
その中に、海外のソフトウェア開発委託先C社がありました。
A社にとって、C社は新規の海外委託先でしたが、A社では、国内委託先のマネジメント経験が豊富だったため、大きな問題はないだろうと考えていました。
「言語の違いに注意していれば、国内委託先と同様に管理する事で基本、大きな問題はないはず…」
「A社が『開発手順・手法、作業工程等』を明確にしておけば、C社は、それに従って開発を進めてくれるはず…」
「C社の進捗状況は、A社との進捗会議と課題管理表のルール決めをしておけば、監視コントロールはできるはず…」
「C社も素人ではないので、この業界で顧客が期待している事は分かっているはず…」
期待通りに行くのでしょうか?
実際には、期待に反し、多くの事件、事故が発生しました。
「A社が指定した開発手順通りに、C社が進めていない…」
「C社側の国の言語に合わせ、文書1式(仕様書、課題管理表等)を2か国版で作る工数がかさみ、コストオーバーした…」
「『文書1式を2か国版で作る追加作業』が想定外に肥大化し、日程が遅延した…」
「文書の明瞭化作業、特に『行間を読んで書き出す作業』が想定外に多く、日程が遅延した…」
「C社にできるだけ『丸投げ』して、A社側の業務負荷を減らしたかったが、逆に増えた…」
「C社が遠隔地で、コミュニケーションエラーが多発した…」
「言語の違いで、コミュニケーションエラーが多発した…」
「時差があるため、C社と会議できる時間帯がない(少ない)。」
「C社側の報告が遅い…」
「C社側の報告が的外れで、答えになっていない…」
「C社の成果物の品質が悪い…」
「C社のマネジメントの品質が悪い…」
「C社側の理由で、突然納期遅れになる…」
「C社側のブリッジSE(プロジェクトマネジャーに相当)が突然離職して、業務が停止した…」
「C社側の進捗が全く見えない…」
実話です。
このケースでは、何が問題なのでしょうか?
外注先の管理は「成り行き任せ」にしては、必ず失敗します。
特に問題が起きがちなのは「実行」と「監視コントロール」です。
今回のケースでは、外注先管理の「実行」と「監視コントロール」のために現場が取るべきアクションは以下のようなものでした。
例えば、「外注先とのコミュニケーションの管理」「外注先との関係性の管理」「そのためのルール決め」「トラブル発生時の報告形式の明確化」「海外委託先ならでの『より詳細な』ルール決め」「相手方の研究」「両社の指揮命令系統整備」等々…。体系的にやるべきことは数多くあります。
皆様のお仕事でも必要な場面は多いのではないですか?
■サマリー
外注先を適切にマネジメントする上で、「外注先管理」を1つのプロジェクトマネジメントと考えることが重要です。
プロジェクトのマネジメントと同様、外注先管理の「立上げ」「計画」「実行」「監視コントロール」、そして「終結」のプロセスを体系的に進められるか?
そして特に問題が起きがちなプロセス。それは「実行」と「監視コントロール」です。
外注先管理に必要な「実行」と「監視コントロール」の具体的なアクションは何か? 留意点を理解しておく事で、外注先管理の成功率は確実に高まります。