ところで皆さん、「何もしない」のは得意ですか?
「実はけっこう苦手…」という人は多いのではないでしょうか。
働きづめに働いて、ようやく訪れた休日、「今日こそはゆっくり何もしないで休むんだ!」と思っていたはずです。
ところがいざゆっくりしようとし始めると、だんだんそわそわしてきて、「ボーっとしているぐらいなら、資格の勉強でもするか…」「映画館でいい映画の一本でも見ないと休日が無駄になった気がする…」など、落ち着かずに活動を始めてしまうことってないでしょうか。
私たちはこんなふうに、「何かを達成したい」「獲得したい」という感情に突き動かされることがあります。
このような感情は、実際にあなたに資格を取得させたり、良い映画を見たという経験をもたらしたりと、いい面ももちろんたくさんあります。
しかし一方で、このような感情ばかりを満たそうとするとどうなるでしょうか。
何かをしても、まだし足りない気がする。もっと頑張らなきゃいけない気がする。
1時間だけ勉強したけれど、もっと勉強しなきゃいけないのではないか。
この映画も悪くはなかったけれど、もっと良い映画が上映されていたのではないか。
同じ時間とお金を使って、もっとよい経験をしていた人がいたのではないか…。
どうでしょう。こんな気分に陥ったことが皆さんにもあるのではないでしょうか。
際限のない、「もっともっと」に突き動かされてしまうのです。
実はこれは私たちの脳内の感情システムのうち、「ドライブシステム」と呼ばれるシステムを使いすぎているために起きていることです。
私たちは生き延びて子孫繁栄するために、脳内に感情のシステムを構築しました。
その一つがドライブシステムです。
まだ野生生物の一員であった頃、私たちは生き延びるためには洞窟にこもっているだけではなく、外の危険な世界に出て、栄養の高い食べ物や、より快適な住居、魅力的な異性を見つける必要がありました。
そこで、そのように行動して何かを達成すると「興奮、喜び」というポジティブな感情を味わえるようにしたのです。自分自身を行動に駆り立てる(ドライブする)システムというわけです。
ところが、現代社会は悩ましいことに、このドライブシステムを必要以上に刺激する仕掛けに溢れています。
SNSを開けば、自分には得られない、友人の「リア充」な投稿を目にします。
ネットの口コミや点数は、自分が選ぼうとしているお店や映画、品物のランキングを可視化し、「もっと上がある」ということを暗示します。
絶え間なく表示される広告は、「もっと痩せなさい」とか「もっと稼いでいる人はいます」とメッセージを発しています。
こんな情報ばかり接していては、気が休まりませんね…。
あなたを疲れ果てさせるまで、何らかの活動に駆り立ててしまいます。
そこでドライブシステムが動き出したことにまずは気づくようにしてみましょう。
「あ、私は今、『何かを得なければいけない』と焦りだしたな~」と、スイッチが入ったことに気づくようにするのです。
そうして少し呼吸に目を向けて、気持ちが落ち着いてきたら、改めて「自分が今何を必要としているか」を問いかけてみましょう。
そうしたら本当に願っていた、「何もしない」に立ち戻れるかもしれませんよ!