この連載の中でもタイムトラベル物をいくつか扱っていますが、今回は少し手法が違うタイムトラベル物です。
人が時空を超えて会いに行けたりするのはよく見るのですが今回は「音声」が時空を超える作品です。どうやって超えるのでしょうか?
思わぬ太陽活動の活発化により、ニューヨークにおいてさえ、オーロラが観測されることになった1969年。消防士のフランク・サリバンは火事場に出動し、大活躍を遂げていました。奥さんは看護師、小さい息子ジョンも元気いっぱいで家の中では愛称として両親から“チーフ”と呼ばれていました。しかし、度重なる火事の現場の一つ、倉庫火災において、父親のフランクは殉職してしまいます。
時は流れて1999年。ジョンこと当時の“チーフ”も大きくなり、警察官になっていました。しかし、恋人ともあまりうまくいかない日々。そんな中、友人が訪ねてきたのをきっかけに、父の形見の無線機を引っ張り出すこととなりました。自身はその扱いをあまりわかっていなかったのですが、あるコールサインが呼びかけてきたのを拾います。偶然に入ったその無線で会話を始めたジョン。ところが会話を続けているうちに、その無線で会話している相手が、1969年の自分の父親、倉庫火事に会う前のフランク・サリバンだということがわかります!
そこでジョンは一計を案じます。時間を超えて父親フランクに、「本来なら殉職してしまう倉庫火事」の現場で、誤った判断をしないように助言を与え得るのです。火が回った倉庫の中で逃げる方向さえ間違えなければ、父は生きていたはず。そして父親はその情報をもとに、倉庫火事を無事に乗り越えます。そうこうして起こるべき過去が変わってしまったのです。
いったん映画の話はここまでとして、我々の仕事現場に目を向けましょう。
皆さん方が実施している様々な仕事、プロジェクトにおいて、多分多くの方は、「リスク特定(リスクの洗い出し)」ということを行っていることと思います。
メンバーを集め、ポストイットを配り、「どんなリスクがあると思う、書き出してみてよ」なんていう形で行っているであろうあのイベントです。でも考えてみるまでもなく、「すべてのリスク」を洗い出せるわけではないのが現実。となると、そんな中で、10個や20個程度のリスクを洗い出して何の意味があるのか?と思った方もいるかもしれません。
しかし、こうは考えられないでしょうか?そうした「洗い出されたリスク」の多くは、起きてもらうとまずい、作り直しや、やり直しなど期間が延びたり、コストが余計にかかったりする、現場に都合が悪いことが多いもの。でも「そうなるかもしれない」「それがおきるとまずい」とわかっているなら「そうならないようにするには、こうすればいい」が見つかれば、その対策を事前に打って、起こらないようにできればいいのではないでしょうか?
そう、事前に具体的な対策を検討するために、具体的なリスクの洗い出しをしている、そうして想定されるまずいことを一つでも起こさないようにするために「リスク特定(リスクの洗い出し)」を行っているわけです。
映画に戻りましょう。1999年から見れば、歴史的に必ず起きる倉庫火災は、「逃げ道の判断を間違えなければ怒らない」がわかっていれば殉職を防げたこと。それを伝えたことでフランクは命拾いします。
しかし、その行動により過去が変わることに。それによってその時点から、本来「殉職してしまうはずだったフランク」に関わることにならなかったはずの人々に、様々な変化が起きてしまい、様々な事件に巻き込まれてしまう違った未来線が生まれてしまいました。このままでは意図しない人々を不幸に巻き込むことに。
そこで1969年の消防士である父フランクと、1999年の警察官である息子ジョンは、互いに時空を超えて無線で情報を交換しながら事態の改善に努めようとするのです。が、その事件や対応方法、そして結末は、ぜひ映画をご覧になってお楽しみいただきたいと思います。
それではまた次回まで、ごきげんよう。