●はじめに
プロジェクト成功に関しては、これまで、QCDの成功=プロジェクトの成功という方程式が、一般的に成功の基準として使われてきたと思います。「QCDを満たせばプロジェクト成功」というのは、成否を判断するうえでは、判断しやすい基準だとは思います。しかし、わたしのプロジェクトの経験からすると、もっと、広い視野で、長期的な観点で、成功を考えることも必要ではないかと思います。今回は、この「プロジェクトの成功」について、わたしの経験を踏まえて、もう少し広い観点で捉えたいと思います。
●成功を広い視野と、長期的観点で捉える
わたしが、過去経験したプロジェクトで、成功し、現在も深く、印象に残った2つのプロジェクトを紹介します。
1.高い顧客満足度を達成
「電子カルテシステム構築プロジェクト」で、ドクターや看護師の要求事項が多岐にわたり、納期が、3ヶ月遅れてC/O(カットオーバー)することになりました。QCDの「Dlivery」を守ることが出来なくて、QCDの視点では失敗のプロジェクトでした。しかし、出来上がったシステムを使うことにより、ドクターや看護師の仕事の効率が、20%以上向上し、その結果、「顧客の顧客」である患者様への診療サービスが向上することになりました。納期は予定より遅れましたが、成果物のValue(価値)が認められ、お客様から、感謝状をいただくことができました。
2.「全社業務改革プロジェクト」で組織の強靭化を達成
全社業務改革プロジェクトを担当したことがあります。スポンサーは当然、社長です。各部門(営業、企画、設計、製造 etc.)の責任者と定期的に議論を重ね、最終的には、合宿をして、組織の中期計画を立案して、社長にプレゼンして、承認され、プロジェクトが実行されることになりました。このプロジェクトは、QCDの観点では、失敗でした。いくつかの機能は、最初のC/Oに間に合わず、段階的にC/Oしていくことになりました。また、本番になってから、いくつか、大きなトラブルも発生しました。しかし、このプロジェクトを失敗という人はいませんでした。その後、このシステムは、組織全体を支える、重要なインフラとなり、企業活動を支えています。(現在も現役で活躍しています)。
●成功の本質
プロジェクトの成功にとって、「QCDの成功」は成否を判定する基準としては、よくできた基準だとは思います。しかし、今回、説明したプロジェクトのように、「QCDの視点」では、失敗としても、成果物にValueがあり、顧客満足度を高めることができた例や、組織全体の長期的な影響を考慮すると、より本質的な成功として、評価されるのではないかと思います。
Tip of the day
●お客様の業務の効率化を図り、社会に貢献することも成功の基準
●成功を長期的な観点で捉える(プロジェクトを通して組織の強靭化)