さて、たくさんの人に集まってもらって研修をしていると、場の空気が一部もや~っとしてくることがあります。
「なんか納得できないんだよなぁ」と思っているけれど、それを言えずにいる人がいたときです。
大っぴらには言えないので黙っているわけですが、近くの人には「なんかピンとこないんだよね」と打ち明けたくなります。
するといつの間にか、その空気がクラス全体に広がっていく…講師としては恐ろしい現象です(笑)
皆さんも、会議でファシリテーターを務めているとき、似たような空気に陥ったことがありませんか?
みんなが「そうだね」とうなずいているなかでちょっと固くなっている人がいて、どうもそこからネガティブな空気が広がっていきそうな感じが…
こんなとき、私たちはついそれを見ないふりをしたくなります。だってそこに触れて、藪蛇になったら怖いですものね。
「ネガティブなことを口にされたら、そのムードが余計広がってしまう!」と思って、表に出したくなくなってしまうのです。
ところがそれは逆効果なことが多いでしょう。
なぜならそうすることで、「ネガティブなコメントはお断り」というサインをファシリテーターが出していることになるからです。
だいたい、一人の人が感じている疑問や反論は、他の人も薄々感じていることがもっぱらです。
表に出そうが出すまいが、多くはすでに持っている気持ちなんですね。
しかし参加者は、ファシリテーターが触れようとしないので、「そのような気持ちは出してはいけないのだ」と受け止めます。
口に出していい「安全範囲」が狭くなり、触れてはいけない範囲が増えていくことになります。
本当はあったはずの疑問や反論が口にしにくくなり、どんどん居心地の悪い会議になっていきます。
そして最後は「一応決まったけど、どうせ計画倒れになるから動かなくていいや」というサボタージュや、「私は忙しいので他の人に…」と役割を避けられてしまうなどの、しっぺ返しを食らうことになります。
(研修だと「役に立たなかった」などとアンケートに書かれることになります!)
場にただよう不満や疑問のサインから目を背けてしまうと、かえって思わしくない事態を引き起こしてしまうのですね。
そこでファシリテーターはむしろ、ネガティブなサインが出てきたら、積極的に拾いに行ってみましょう。
「○○さん、今ちょっと首をひねってらっしゃいましたけど、どんなこと考えていらっしゃいましたか?」
「○○さん、少し表情が曇ってますけど、何か気にかかっていることありますか?」など、参加者のネガティブサインを拾ってボールを投げてみてください。
参加者は「おっ、よく見てたな」と思って、多くの場合は本音を教えてくれます。
あえてファシリテーターサイドからネガティブな気持ちを言ってみるのも一つです。
「ちょっとしっくりこないって思っている人、いませんか?」
「こんなのできない!って考えている人、いると思うのですけれど…?」などと振ってみると、「実は…」と口火を切ってくれる人も出てきます。
こんなふうにネガティブサインに応答していくと、「そこも口にしていいんだ!」と、参加者の安全範囲が広がっていくわけです。
ファシリテーター自身もいつ出てくるかわからないネガティブコメントに怯えなくて済むようになります。
ネガティブサインは積極的に拾いにいく、ぜひやってみてくださいね!