今回はPMOの運営の4回目として、「組織のプロジェクトマネジメントの改善」についてお話しをします。
1.組織のプロジェクトマネジメントの改善の必要性
組織目標の達成を、プロジェクト活動に依存している組織では、プロジェクトを成功させ、そこから組織のビジネスの恩恵(ベネフィット)を生み出す必要があります。
前回は、このためにPMOが実施する「プロジェクトとの円滑な対応」についてお話ししました。
組織目標を達成するためにPMOにとって効果的なことは、個別プロジェクトへの取り組みより、組織全体のプロジェクトマネジメント力の向上になります。今回はこの視点から、今までに説明したPMOの機能について、継続的に取り組みを続けることで、組織のプロジェクトマネジメント力を高める必要のある機能を例に挙げてお話します。
2.組織のプロジェクトマネジメント標準の改善
組織がプロジェクトマネジメントに取り組み始めたころは、プロジェクトごとにマネジメントの方法はさまざまでした。組織のプロジェクトマネジメント標準は、組織の水準に合わせて守れるようなレベルに定めることが重要です。
PMOは、組織のプロジェクトマネジメントのレベルが上がるにつれて、プロジェクトマネジメント標準のレベルを高めていきます。プロジェクトマネジメントの指標は定量化されるようにすることが重要です。
3.組織のプロジェクトマネジメントのツールや技法の改善
組織がプロジェクトマネジメントに取り組み始めたころは、プロジェクトマネジメントに用いるツールや技法はプロジェクトごとにさまざまでした。しかし、組織が主要なプロジェクトを統一的に管理するためには、適用するツールや技法が統一化される必要があります。
PMOは、進捗管理、品質管理、コスト管理などの管理方法、また、プロジェクトマネジメント計画書、各種の報告書などの書式も統一化することが必要です。
PMOは、これらのツールや技法、書式も、組織のレベルが高まるにつれて、組織に見合った水準のツールや技法を取り入れていきます。
4.組織のプロジェクトマネジメントに関するノウハウのデータベースの更新
PMOは、組織には、プロジェクトマネジメントに関するノウハウや有効な情報を格納したデータベースを構築します。データベースに格納する情報は、プロジェクトを容易に登録したり参照したりできるようにします。
PMOは、このデータベースが活用されるように、情報に索引をつけ、検索を容易にしたり、登録を促進します。また、古くなった情報や、利用されない情報は、データベースから削除し、常に利用しやすいデータベースを維持するようにします。
5.組織の教訓データベースの更新
プロジェクトが、プロジェクトの実践から学んだ事柄を「教訓」と言います。PMOは、プロジェクトが学んだ教訓をすぐに登録しやすいようなデータベースを構築し、プロジェクトに教訓の登録を促進します。
一般に、プロジェクトが登録する教訓は、プロジェクト固有のものが多くみられ、そのままでは他のプロジェクトには適用できないものもあります。PMOは、そのような教訓は一般に適用する形の教訓に修正して登録します。また、他のプロジェクトから検索が少ない教訓情報はデータベースから削除し、常に利用しやすい教訓データベースを維持します。
6.プロジェクト・マネジャーのコンピテンシーの見直し
組織のプロジェクト・マネジャーに必要なコンピテンシーも次第に変化をしますので、PMOはコンピテンシーの見直しが必要になります。
たとえば、PMBOKも第6版が発行され、プロジェクト・マネジャーにはビジネスを理解する能力が求められるようになります。
また、企業を取り巻く環境の変化でビジネス領域が変わったり、必要な技術療育も変わります。最近のアジャイル、クラウド、ビッグデータ、AI、SOR/SOEなどへの企業としての取り組みも考慮し、コンピテンシーを考える必要があります。
7.プロジェクト・マネジャーのトレーニング体系の見直し
プロジェクト・マネジャーのトレーニング体系は、制定後も常に見直しを行います。
トレーニング実施後のアンケートなどによる改善や、組織のプロジェクト・マネジャーのスキルの向上に合わせてトレーニングのレベルやプログラムを見直します。
また、6項で述べたプロジェクト・マネジャーに必要なコンピテンシーを考慮したトレーニング体系を設定する必要があります。
以上のように、PMOの機能は、一度設定した形を継続することではなく、組織のプロジェクトマネジメント力の向上や、外部環境の変化に合わせて、常に見直しを行い、組織のプロジェクトマネジメント能力を継続的に向上させる努力が必要です。