組織のＰＭＯは、設立時の形態を維持するのではなく、年月の経過とともに成長していく状況が見られます。今回はそのようなＰＭＯ組織の成長についてお話をします。
１．ＰＭＯの成長段階
ＰＭＯ設立の目的は組織によりさまざまですが、多く見られるのは、個別プロジェクトの赤字防止や支援です。
しかし、組織としての目標は、プロジェクトにより事業の業績向上や利益の拡大を図り、組織目的を達成し、経営計画の達成を果たすことにあります。
組織がプロジェクトにより組織目標を達成するためには、ＰＭＯは下記のような段階を経て、プロジェクト、組織、経営層のプロジェクトマネジメント力を高め、支援することが重要になります。
- 第一段階 プロジェクトの支援
- 第二段階 組織のプロジェクトマネジメント力の育成
- 第三段階 経営層の支援
２．第一段階 プロジェクトの支援
ＰＭＯの初期段階でよく見られる形態が、個別プロジェクトの支援をする形態です。典型的な例は、”火消し”と呼ばれる、プロジェクトだけではもはや解決が難しいコスト、品質、日程などの問題が発生し、組織のリソースを投入する状態に対応する場合です。
また、個別プロジェクトが重大な問題を抱え込まないように、モニタリング、リスクチェック、プロジェクトマネジメント計画書審査などを実施し、問題を抽出し、改善提案をすることもこの範囲に入ります。また、個別プロジェクトからのプロジェクトマネジメントの相談対応も実施します。
しかし、ＰＭＯによるプロジェクトの支援の領域の業務は、個々のプロジェクト対応のため効率が良くなく、組織のプロジェクトマネジメント力の向上はあまり期待ができず、組織目標の達成はなかなか望めません。特に”火消し”は、問題の事後処理ですので、本来あるべき姿ではありません。
３．第二段階 組織のプロジェクトマネジメント力の育成
組織目標を達成するためには、組織としてのプロジェクトマネジメント力を向上させる必要があります。
このためにとても重要な事項は、組織のプロジェクトマネジメントの標準化を実施することです。また、プロジェクトマネジメントで使うツールや技法も標準化を行うことが重要になります。
また、プロジェクト・マネジャーの人材育成が必要です。ＰＭＯは、プロジェクト・マネジャーの人材育成プログラムを作成し、人材育成の研修を実施します。
組織のプロジェクトマネジメント標準やツールは、人材育成の研修で組織に普及させたり、個別プロジェクトのプロジェクトマネジメント計画書のレビュー、モニタリングを通して適用を指導します。
この時期になると、プロジェクトマネジメントに積極的に取り組む人材も見られます。そのような人材の自主的な向上心を発展させるために、組織に”ＰＭコミュニティ”を設立し、そのような人材の能力を向上させることも必要です。
４．第三段階 経営層の支援
次の段階では、経営層に対する支援が重要です。経営層は、組織の重要なプロジェクトのオーナーであることが多いため、組織の重要プロジェクト状況の把握や、重要プロジェクトに対する意思決定が必要になります。
経営層が組織の重要プロジェクト状況を把握するためには、重要プロジェクトに関する可視化報告を行うことが必要です。重要プロジェクト一覧表やダッシュボードなどの形式で、重要プロジェクトに関する実行状況を、緑／黄／赤で表示したり、コスト／品質／納期を定量化表示するなどして、経営層が判断容易なかたちで情報提供することが重要です。
また、情報提供するだけでなく、報告とともに経営層との会話が必要です。経営層にプロジェクト状況やプロジェクトからの依頼を伝えるとともに、経営層からのプロジェクトに対する意向を聞き出すことが重要です。
さらに、ＰＭＯは、経営層が主催するプロジェクト審査会の仕組みを制定し、開催することが重要です。ここでは、経営層が定例的にプロジェクトからの状況報告を受け、経営層が問題認識と意思決定を実施することが重要になります。
５．ＰＭＯの成長の進め方
ＰＭＯは、上記に述べたような段階を経て成熟度を高めていくことが多くみられます。ＰＭＯは、上記を認識したうえで、組織のＰＭＯ状態を継続的に成長させるように考慮することが必要です。
