組織のPMOには、どのようなコンピテンシーが求められるでしょうか。今回はPMOに求められるコンピテンシーについてお話します。
1.コンピテンシーとは
コンピテンシーには様々な解釈がされています。一般的な解釈は、優れた職務遂行能力を発揮する人に見られる、知識・スキル・態度・行動などを言います。
PMOに求められるコンピテンシーは、PMに求められるコンピテンシーと類似していますが、PMO特有の要素があります。PMO組織では、組織にあったPMOのコンピテンシーを定め、PMOを育成することが重要です。
2.PMOのコンピテンシーの体系
PMOに求められるコンピテンシーには、様々な要素が考えられます。ここではPMに求められるコンピテンシーと同様に、3つの体系に分類してみます。
3つの体系は、「知識/スキル」「実践力」「人間性」から構成されます。以後、3つの体系ごとに概要を述べます。
3.知識/スキル
PMOが能力を発揮するためには、実践のための基礎となる知識が必要です。これはさらに全般とPMO機能に分けられます。
全般の領域は、プロジェクトマネジメントに関する知識、すなわち、PMBOKを基本とします。さらに、組織のプロセス資産やプロジェクトを取り舞く環境の理解が重要です。
また、PMOに関して、PMOの概念、PMOの組織形態と特徴を知ることが必要です。そして、自組織のPMOの設立目的を知っておく必要があります。
PMは自プロジェクトを中心にプロジェクトマネジメントを認識しますが、PMOは組織全体の視点から、プロジェクトマネジメントを統制することが必要になります。このために、プロジェクトマネジメントの基本的な知識のベースが異なります。
次に、PMOが実践すべきPMO機能について習得しておく必要があります。PMOの機能については、このメルマガで3つの役割に分類してご説明してきました。
3つの役割とは、「部門全体のプロジェクトマネジメント力の向上」「経営層の『組織のプロジェクトの統制』に関する支援」「個別プロジェクトの支援」です。この3グループに関して多くのPMO機能をご紹介いたしました。PMO機能は、メルマガの第29回でまとめを掲載しましたので、そちらをご参照ください。
4.実践力
PMOとして能力を発揮するには、組織において、複数のプロジェクトと対応したり、経営層を支援する場に実際に身を置いて経験することが必要です。このような場で失敗や成功経験を踏むことで、PMOとしての実践力が向上します。単に知識を身につけただけではPMOとして効果的な成果を出すことはできません。
実践力の発揮例としては、以下のような例が挙げられます。
- 経営層が目的としているPMO組織の設立と運営
- 自組織に適合したプロジェクトマネジメント標準やツールの開発とそのプロジェクトへの適用
- 組織のPMコンピテンシーの定義
- PMトレーニング体系の定義とトレーニングの実践
- PMコミュニティの企画と運営
- プロジェクトマネジメント計画書の作成支援プロセスの制定と実施
- プロジェクトモニタリングプロセスの制定と実施
- リカバリープロセスの定義とリカバリーの実施
- 知的資産管理DBの構築と運営
- 重要プロジェクトのサマリーの経営層への報告
- プロジェクト審査制度の制定と実践
これらのほかにもPMOとして実践すべき事項は多くあります。それらはご説明してきたメルマガをご参照ください。
5.人間性
PMOとして能力を発揮するためには、知識や実践力に加えて、PMOの人間性が重要になります。
人間性には、コミュニケーション力、指導力、マネジメント力、認識力などの要素があります。
コミュニケーション力は、ステークホルダーの訴えを短時間で把握できたり、ステークホルダーに自分の考えをわかりやすく伝える能力が必要です。
指導力は、プロジェクトの状況にあわせた指導・コンサルテーションを行ったり、リスクや課題の解決の指導ができることです。
マネジメント力は、組織のプロジェクトマネジメント統制を実施したり、プロジェクト・マネジャーの能力を向上させる能力になります。
認識力は、プロジェクトの状況や組織のプロジェクトマネジメント力を俯瞰的に把握できる能力です。
このような人間性の要素があることにより、PMOとしてより優れた能力を発揮できることになり、人間性はとても重要な要素です。
今まで3年間にわたり、「組織&プロジェクトに役立つPMO活用術」を掲載してきました。今回で一区切りとさせていただきます。長い間ご愛読いただきありがとうございました。