よくプロマネから「プロジェクト・マネジャーとして、責任に見合った権限を与えられていない」「上司はプロジェクトの成功責任だけを押し付けてくる」「責任と権限のバランスが取れていない」「プロジェクトに必要な要員をアサインする権限がない」という声をよく聞きます。
今回は、プロマネの「責任」と「権限」というテーマでプロジェクトの成功を考えていきます。上記のような環境に対応できる武器についてお話ししていきます。
そもそも、プロマネの「責任」とは何でしょうか?
「プロマネは最適なマネジメント・プロセスを選択して、プロジェクトを成功に導く」責任があります。まさに、プロジェクト成功請負人です。
現場レベルの成功(例えばQCD目標達成)だけでなく、組織にBenefit(Business value:ビジネス価値)を与え、ビジネスに貢献することも求められています。
また、プロジェクトを通して、メンバーを育成することも、プロマネに課せられた責任です。
それでは、そのような「責任」を果たすために必要なプロマネの権限についてはどうでしょうか?
権限には2種類あります。「公式な権限」と「非公式な権限」です。
「公式な権限」は組織から与えられます。例えば、プロジェクト・マネジャーという肩書は組織から与えられ、プロジェクトの計画、実行、監視・コントロールなどのプロジェクトマネジメントサイクルを遂行することができます。しかしながら、そのような仕事を遂行するために必要なリソース(人・物・金)に関する権限は通常のプロジェクトではスポンサー(上位マネジメント)が握っており、プロマネは持っていないことが多いという現実があります。
そのことが、プロマネの仕事を困難にしていると言えます。リソースを自分の裁量で自由にコントロールできないからです。
一方「非公式な権限」は組織が与えることはできません。これは、人間関係に関するパワーです。プロマネは、この非公式な権限を通して、対人関係でリーダーシップを発揮して、プロジェクト成功に必要な武器を獲得することができます。
そのためには、自発的に行動して、必要なものを獲得する勇気が必要です(プロジェクトに必要なことは、法律違反以外は何でもする勇気!)
必要なものを獲得したり、人にやってもらうには、対人関係力が必要となります。
組織において良好な人間関係を日頃から構築しておくことが肝要です。そうすれば、困ったときに、助けを借りることができます。「頑張っている人は応援したくなる」ということです。筆者は、プロジェクト推進するにあたって、上位マネジメントや他部門の人たちの力を借りてきました。
人間関係は「組織の政治」であり、組織で何かを達成するときの有効な手段です。
現場で解決できない問題(例えば、追加の要員やコスト)が発生したとき、上位マネジメントにエスカレーションするのは、プロマネの権限であると同時に責任です。
筆者の例を挙げれば、あるプロジェクトでネットワーク設計できるスキルのあるメンバーが必要となり、日頃からコミュニケーションを通して信頼関係を構築していた上位マネジメントにエスカレーションして、他部門と交渉してもらい、専門家を投入してもらったことで、自分の計画を予定通り推し進めることができました。上司を味方にすれば、上司はあなたのためにもっと仕事をしてくれるようになります。
プロマネは誰かが権限を与えてくれるのを待つのではなく、権限を自ら獲得する責任がある。「権限は歩いて来てくれない!」のです。
★Tip of the day
・責任(Responsibility)と権限(Authority)はコインの裏表
・「非公式な権限」を使ってステークホルダーを動かす
・責任を取るからこそ権限がついてくる!