先日、私が年上の友人に、日々の愚痴やら悩みやらをこぼしていたところ(笑)、急にその友人が「実は、できるなら今すぐ仕事を辞めたいぐらい憂うつなんだよね」と言い出したのでびっくりしました。
その人はいつもニコニコしていて、落ち着いた雰囲気の素晴らしい人なので、そんなふうに心の中が憂うつな気持ちで満たされているとはちっとも見えなかったのです。
その人は自分でお店をやっている人なのですが、「お店は順調で、皆に言わせれば十分成功しているじゃん、ということになる。なのに最近、仕事人生のなかで一番といっていいくらい、憂うつな気持ちなんだ」というのです。
もちろん、いくら順調そうに見えても、他人からは見えない苦労はあるのでしょう。でも、外側の状況としては、そんなに憂うつにならなくても確かによさそうなのです。
そんなことをつらつら話しつつ、私がストレスマネジメントの一環としてお伝えしている「考え方のクセ」について、ちょっと話題に出してみました。
例えば憂うつな気分が増してくると「拡大解釈・過小評価」といって、「失敗や欠点、うまくいっていないところは虫眼鏡を使って隅から隅まで見ようとするのに、成功や長所、うまくいっているところについてはあっさり片付けてよく見ようとしない」といった思考パターンになってしまいやすいのだ、という話です。
すると友人は「まさにそうだ!本当にそうだ!」といってずいぶん当を得た様子で、「いや~、ちょっとすっきりした。こんな心の仕組みなんて、知らなかったもの」といくぶん晴れやかな気持ちになってくれたようでした。
このように、心の仕組みを知るだけでも、ずいぶんと救われる面があります。
「私だけじゃないんだ」とわかることも、ほっとしますね。
憂うつな感情と思考は連結し、スパイラルを起こします。一度沈んだ気分になると、さらなる深みに沈ませるような形で、思考が展開していくのです。
「さっきはうまく上司と話せなかった。自分はひどく馬鹿に見えたに違いない。私はいつもこうだ。今回のことをきっかけに、きっと上司は私の評価を下げるに違いない。もうこの職場に居場所はないだろう。仕事がなくなったら、すぐに困窮して、転落人生まっさかさまだ。そしてそして…」
このように、実際に起きたことは小さな出来事だったとしても、考えられる限り自分にとって最もダメージが大きい、ネガティブな解釈を選んでいってしまうのです。
実際には起きていない「不幸」によって、私たちは散々痛めつけられてしまうのです。
外はさんさんと光がさしていても、その人の周りだけは雲に覆われているようですね。
そこで、このようなスパイラルにはまっていることに気づいたら、ちょっとだけ「思考」と距離をとるようにしてみてください。
「この憂うつな気分は、思考パターンがネガティブに傾いてしまったせいだ」と考えて、永遠に続きかねない思考を追いかけるのをやめてみましょう。
雲から少しだけ足を踏み出してみれば、明るい日差しも目に入りだすと思いますよ!