複数プロジェクトを掛け持ちしているプロジェクト・マネジャー(PM、プロマネ)は、まさに大道芸人が複数のピンをジャグリングする(操る)姿に似ています。あるピンに集中すると、他のピンをうまくハンドリングできなくなります。操るピンの数を増やすほど、同時に操るにはスキルと経験が要求されます。操るピンの数が3個以上になると難易度がぐっと高くなります。
プロジェクトの小規模化やプロマネ人材不足により、掛け持ちプロマネが増えている現実があります。プロマネが複数のプロジェクトを兼任している場合、あちこちの現場を駆け回らなくてはならず、一つの現場に長時間とどまるのは難しいものです。それは仕方がありません。そのことを踏まえ、今回は複数プロジェクトをどうやって効果的かつ効率的にマネジメントするのかを考えていきます。
現在、あなたはプロマネとして3つのプロジェクトを掛け持ちしています。
- A社開発プロジェクト(4名)
- B社開発プロジェクト(3名)
- 社内業務改革プロジェクト(2名)
この3つのプロジェクトをうまくジャグリングする操縦術を考えていきます。メンバーは全部で9名です。
◎操縦術1(適切なチーム編成)
複数の小規模プロジェクトの場合、各プロジェクト・メンバーは水平構造でプロマネの直下にいることが多い。上記3プロジェクトの場合、9人のメンバーをプロマネ直下に配置すると、プロマネとのコミュニケーションパスは9つもあり、掛け持ちしてマネジメントすることは困難になる。そこで、3つのプロジェクトにリーダーをそれぞれアサインして階層型にする。そのことにより3つのメリットがある。
1.コンタクトポイントを減らすことが出来る(水平→階層 組織構造)
9つから3つのコミュニケーションパスになりプロマネの負担は軽くなる。プロジェクトを階層化するとメンバーとの直接のコンタクトがなくなり、風通しが悪くなるデメリットがあるが、それでも時間が限られた状態で、複数のプロジェクトを管理する上で必要である。それを補うために適宜、昼食会などの非公式なコミュニケーションを活用することも視野に入れよう。
2.PLがリーダーシップを発揮
PLに権限委譲することにより、チーム内で発生する問題に対してPLがリーダーシップを発揮できる。PLが処理できない問題に対しては、リーダーからアラートを挙げてもらいPMが対応する。
3.PM不在時の対応が可能
PLの一人をPM補佐に任命し、PMが不在でも対応できる仕組みを構築できる。
◎操縦術2(複数プロジェクトの見える化)
マルチプロジェクト・タスクカレンダーを作成して、3つのプロジェクトを1枚のシートで見える化する。マネジメントポイントとして、
1.複数プロジェクトが俯瞰できるようにする
2.各プロジェクトのマイルストーンを明確にする
3.作業の構造化は2ndレベルWBSまで
4.ダブりを見える化
・要件定義
・C/O時期 etc.
5.イナズマ線でタスクの進捗管理
◎操縦術3(コミュニケーションツール)
1.緊急連絡できる仕組み(アラートシステム)
プロマネが現場にいない場合、メンバーが緊急にプロマネに連絡して指示を仰ぎたいこともある。その場合、緊急連絡できるアラートシステムを用意して、迅速なマネジメント・アクションが出来るようにする。
2.プロジェクト情報の共有(PSR)
PSR(プロジェクト・ステータス・レポート)を電子メールで送り(1回/週)プロジェクトの状況(QCD+Risk)を共有する。
3.F2Fコミュニケーション
メールによるコミュニケーションだけでは、メンバーの悩みやモチベーションは把握できない。1回/月くらいの頻度で、F2F(Face to Face)の非公式なコミュニケーションの場を設定することも考慮する(working lunch等)
◎操縦術4(メンバー・リーダーシップ)
1.課題管理表
メンバーが自律的に課題に取り組むためのリーダーシップ・ツールとして活用する。
2.運用方法変更
従来 → PMが課題管理を行う
改善後 → メンバーが課題を自律的に管理してPMに報告する
★Tip of the day
- 階層型体制でコミュニケーションパスを減らす
- アラートシステムで意思決定を迅速に行う
- メンバー・リーダーシップの発揮(メンバーのSelf-Mgt)