研修でコーチングを皆さんに実践していただくと、コーチ役と相手役の間でこういうやり取りが発生することがよくあります。
相手役「これこれこんな感じで、もうにっちもさっちもいきません」
コーチ役「なるほど、お困りですね。それではこうしてはいかがですか」
相手役「でもそんなときって、こうなるんです」
コーチ役「う~ん、ではこうしてみてはどうですか」
相手役「ええ、でもそれはこういう理由で難しいんです」
あれ?という雰囲気になってきますね。なんだか何を言っても反論されてしまう…。
例えばこれは上司と部下という関係でもよく生じるのではないでしょうか。
こんなふうに誰かが「困ってるの、助けて!」とか「どうしたらいいの、教えて!」というサインを出してくると、「はいはいはい~!」と全力で助けに回ってしまう方がいらっしゃいます。
ところが意外と、当の相手はそのアドバイスを「いや、でも~」と何らかの理由をつけては受け取ってくれなかったり、「う~ん」とうなって曇り顔だったり…。
それ以外にも、日常生活で思わず相手のためを思って「ささっとなんでもやってあげちゃう」人や、頼まれていないけれど「よかれと思って手助けしちゃう」人は多いのではないでしょうか。
なのに意外と相手は感謝してくれる様子が少なかったり、反応が薄かったり…。
実はこれ、ご自身が「親切ないい人」、つまり「世話焼き母さん」ポジションを取り続けることで、相手は逆に「子ども」のポジションに置かれてしまっているのかもしれません。
「子ども」のポジションなら、親の言うことに反抗してみたり、「当たり前」と思って甘えてしまうのも当然です。
ただ私たちはいい大人なので、「子ども」のポジションに置かれ続けることは、実は居心地の悪さも感じています。
「大人」として問題に立ち向かってみたり、自分も「親」のポジションを取って、逆にあなたのお世話を焼いてあげたいと思っているかもしれません。
そこで、普段「世話焼き母さん」の自覚がある方は、そのポジションを降りる選択もしてみましょう。
普段ならアドバイスをすぐしてしまうところを、「あなた自身はどう対処したらいいと思っているか」と大人として意見を求めてみたり、「困った! 助けて!」とあえて自分が「子ども」ポジションを取ってみたり…。
そうすると、きっと普段は見られない相手の側面が見えてくるはずです。
「なぁんだ、私がせっせとお世話してたからこうなっていたけど、実は私がぐうたらしてみたら、相手がやってくれるのね」という発見があるかもしれません。
ついついやってしまう「いい人」を、少しの勇気を出して、一度離れてみませんか!