プロジェクトを遂行する際の条件には、「制約条件」と「前提条件」があります。この2つの条件をマネジメントすることがプロジェクト成功には重要です。ややもすると混同されやすいこの2つの条件について、今回はお話ししていきます。
◆プロジェクトには条件がある
プロジェクトや仕事をする上で全ての条件が完璧に揃うことは稀です。例えば、プロジェクトを遂行する上で、十分なリソース(人・物・金)が潤沢に提供されることは、期待できません。特に最近は、ITスキルのある要員は慢性的に不足しています。そして、無いものねだりをしても、条件を揃えることは困難な状況です。このような状況下で、プロジェクトを成功させるには、プロジェクトマネジメント計画のなかで、条件を明確にすることが肝要です。
プロジェクト憲章は、プロジェクト開始時に、プロジェクトを定義し、組織にプロジェクトを認可してもらう公式な文書ですが、その記載項目のひとつあるプロジェクトの遂行条件には、制約条件(Constraints)と前提条件(Assumptions)があります。
それでは、まず、制約条件からみていきましょう。
◆制約条件(Constraints)
プロジェクトを実施するうえで、プロジェクト・チームでは変更できない条件のことを示します。いわゆる、お客様や組織から与えられた条件(与件)です。プロジェクトから見ると「手枷足枷」になります。契約によるプロジェクトの場合は、契約条項が制約条件になります。例えば、既定の予算、指定された納期、などです。更にプロジェクトによっては法律の規制なども制約条件となります。ビル建設プロジェクトでは、建築基準法の制約に従う必要があります。2020年には東京でオリンピックが開催されますが、7月24日の開会式が遅れることは許されません。
このように外部から設定されている条件を“制約条件”と呼びます。
それでは、制約条件は絶対でしょうか?
制約条件は基本的には、お客様や組織から与えられた条件なので、遵守する必要がありますが、プロジェクトスコープの変更・追加や予想外の出来事により、プロジェクト進捗が予定より遅れることも発生します。その場合、納期を遅らせることや、優先順位付けを行い五月雨式にS/I(サービス・イン)することを、お客様と交渉する必要があります。制約条件を絶対と考えず、ステークホルダーとのコミュニケーションにより、WIN-WINの解決策を見つけることも肝要です。
では、次に、前提条件をみていきましょう。
◆前提条件(Assumptions)
プロジェクトを進めるにあたって、これだけは成り立っていると仮定していること。もっと分かりやすく言えば「プロジェクト・チームが当てにしていること、期待していること」です。
例えば、「プロジェクト成功のために、必要な要員がアサインされる」や「今回のプロジェクトは大規模なのでプロマネは専任で担当する」というのは前提条件です。
前提条件が壊れるとリスクになります。
前提条件は、そういう意味で「リスクのお友達」ということもできます。前提条件をきっちり洗い出せば、プロジェクトに内在するリスクを特定しやすくなります。
その観点から、前提条件分析はリスク洗い出しのツールとしても使用されます。
プロジェクト計画を立てるときには、情報が不足している中で、さまざまな不確実なことに対して、前提条件を置きながら計画を組み立てます。しかし、多くのプロジェクトでは前提条件がその通りに行かないために、代替手段を考慮しながら最適なプロセスを適用して、プロジェクトを遂行することが大切です。
★Tip of the day
- 制約条件と前提条件は全く別物である
- 制約条件はプロジェクト・チームに対する手枷足枷
- 制約条件を絶対と考えない!
- 前提条件はプロジェクト・チームがアテにしていること(期待していること)
- 前提条件が壊れるとリスクになる!