第1回では、PMOには複数の組織形態があり、役割が異なることを述べました。
今回は、その中の“組織のPMO”の役割を考えましょう。
PMOが設立される経緯はさまざまですが、以下の理由が多くみられます。
- 事業成績に直結するプロジェクトの成果の改善
- 組織全体でのプロジェクトマネジメント力の向上
- プロジェクト・マネジャーの育成
- プロジェクト状況の可視化による経営層の関与の強化
- 大規模案件の支援
特に、ITベンダーでは、請負契約でのシステム開発で赤字プロジェクトが発生する問題があります。大規模プロジェクトがトラブルとなった場合には、企業の業績に大きな影響を及ぼします。
また、製造業の新製品プロジェクト、金融業の商品開発プロジェクトなどの例では、社内外状況を認識し、パフォーマンスに優れた製品をいち早く出せるよう、プロジェクトをコントロールすることが企業のビジネスの成否に大きな影響を及ぼします。
現在は多くの業界で、プロジェクト型の業務が増えており、企業の目的を達成するためには、プロジェクトを安定的に成功に導くことが非常に重要になっています。
このような状況から、企業の経営者は、経営層の関与が可能であるように、また組織横断的に活動ができるように“組織のPMO”を設置しています。
この主旨に適合する“組織のPMO”は、「全社PMO」や「部門PMO」と呼ばれます。
このようなPMO組織では、組織としてのプロジェクトマネジメントに着目する必要があり、次のような役割が求められます。
- 組織全体のプロジェクトマネジメント力の向上
- 経営者の「組織のプロジェクト統制」に関する支援
- 個別プロジェクトの支援
“組織のPMO”の役割は、個別プロジェクトの支援に留まらず、組織全体のプロジェクトマネジメント力の向上、経営者の支援を視野に活動を行う必要があります。
すなわち、組織のプロジェクトマネジメント全体を統合する重要な役割を持っています。
個別プロジェクトの支援も、方針が不明確な支援は効果が発揮できません。組織のプロジェクトマネジメント方針に沿った支援を行うことが重要なのです。
実際の“組織のPMO”は、それぞれの組織により「設立の主旨」が異なります。
“組織のPMO”のメンバーの方は、「設立の主旨」をよく理解し、上記3つの役割を果たすように、その主旨に合う活動をする必要があります。