前回まではPMOの組織上の分類を見てきました。
分類としては、組織のPMO(全社PMOや部門PMO)、プロジェクト内PMOがあることをお話してきました。
このうち、中心的な存在で事例が一番多い組織上の形態は、部門PMOです。
これからは部門PMOを中心に話を進めることにいたします。
第2回で述べたように、組織のPMO、すなわち部門PMOには次の3つの重要な役割があります。
- 部門全体のプロジェクトマネジメント力の向上
- 経営者の「組織のプロジェクト統制」に関する支援
- 個別プロジェクトの支援
この3つの役割はいずれも重要ですが、部門PMOとして特長的な役割は、1、2となります。
1.部門全体のプロジェクトマネジメント力の向上
組織目標を達成するために多数のプロジェクト型の業務が継続的に実行されている組織では、プロジェクトの遂行方法を組織として最適化することで、組織目標の実現を効果的に達成できるようにする必要があります。そのためには、組織のプロジェクトの考え方の統一や、プロジェクトのマネジメントに関する共通要素を統一し、組織に普及させていく活動が重要になります。
2.経営者の「組織のプロジェクト統制」に関する支援
多数のプロジェクトのスポンサーとなっている組織の経営者/責任者にとっては、組織経営に関してプロジェクトの意思決定を継続的に実施する必要があります。PMOは経営者の目標達成のために、プロジェクト情報を可視化して提供したり、意思決定支援をすることが重要です。
3.個別プロジェクトの支援
支援対象の個別プロジェクト数が多いと、個別プロジェクトの支援に多くの時間が取られ、上記の1、2項の役割を実施する時間が取れなくなります。
従って、個別プロジェクトの支援は、限定した機能に絞るなどの考慮をする必要があります。部門PMOとしては、自組織の特長を認識して、1~3の役割のバランスを適切にすることが重要です。
多様な役割を持つ部門PMOが最初に実施すべきことは、部門内にPMOの定義を明確にすることです。そして、PMOは、部門の経営層からPMO組織およびその活動に対する支援を確立する必要があります。そのためにPMOは、経営者に対して、PMO活動の目的や有効性を説明し、活動内容の合意を得ておく必要があります。
また、PMOは、プロジェクトにとって、有効な支援活動を行う組織ですが、組織によっては活動がプロジェクトに十分に理解されない場合があります。そのような弊害が起きないようにする必要があります。
さらに、部門PMOは、経営者とプロジェクトの両方とコミュニケーションを取り、両者の橋渡し的な役割を果たします。
以上の様に、部門PMOは、組織の重要なステークホルダーに対して有効な活動を提供する必要があります。
部門PMOは、上記のような多様な役割を果たすため、自らのPMOの目的、役割、機能、有効性などを検討し、それらを文書化することが非常に重要です。文書は、部門の経営層だけでなく、プロジェクトの母体組織や関係部門を含む部門全体に周知されるような文書であることが必要です。
たとえば、部門の標準として、「PMO活動標準」などを定め、部門全体にPMOの活動を広く周知させる方法などがあります。
PMOは、このように定義された文書、経営者の支援をバックボーンとして、自らの活動を個人的活動でなく、組織的な活動として部門に貢献する必要があります。