今回は第5回に続き、「部門全体のプロジェクトマネジメント力の向上」に関する機能をお話したいと思います。
前回は、「管理対象プロジェクトの定義」について話しました。
今回は、「組織のプロジェクトマネジメントに関する標準化」を話します。
【標準化の目的】
組織や部門のPMOは、組織のプロジェクトマネジメントの標準化を行います。
その目的は以下の通りです。
1.プロジェクト遂行能力を個人依存から脱却し、組織のプロジェクトマネジメント能力を高める
標準が定められていない場合、プロジェクトの遂行能力は各プロジェクト・マネジャーに個人依存になります。プロジェクトの成功は個人依存になり、ばらつきが出ます。
標準制定により、プロジェクト・マネジャーは、標準を参照したプロジェクト運営を行うことで、プロジェクト成功のばらつきを削減します。これにより、組織全体のプロジェクトマネジメントレベルの向上を図ります。
2.組織として各プロジェクトの遂行状況を一元的に把握することを可能にする
標準が定められていない場合、プロジェクトのプロジェクト状況報告タイミングや尺度はプロジェクトにより異なります。従って、組織としてはプロジェクト状況の認識が不十分であり、組織としてプロジェクト状況を統一的に認識することが困難です。
標準制定により、マネジメント・プロセスの標準化などを図り、プロジェクト状況の統一的な把握を実現できます。これにより、危険のあるプロジェクトを早期に認識し、対処ができます。
3.プロジェクトの成果物を組織の資産として活用を図る
プロジェクトでは、活動の結果、プロダクトとしての中間成果物や最終成果物が作られます。また、マネジメント上の成果物も作られます。標準制定により、成果物を生成する工程や成果物の種類などが定められていると、以後のプロジェクトで活用することができます。このことは、IT受注企業などの同時に多数のプロジェクトを実施する組織では、プロジェクト遂行の効率を高めることができます。
【標準化の対象】
組織のPMOが標準化の対象とする領域は次の2つです。
1.プロジェクト・マネジメント・プロセスの標準化
プロジェクトの発足から終結までのプロジェクトマネジメントに関して、組織で必要なマネジメント・プロセスや、必要な管理上のドキュメントの種類を定めます。具体的には、進捗管理、品質管理、コスト管理、リスク管理、コミュニケーション管理などマネジメントに関する標準化を行います。標準化は、PMBOK(R)を参考にします。
2.プロダクトに関する標準化
プロジェクトが生み出すプロダクトを開発するためのプロセスや、成果物に関する標準や基準を定めます。プロダクトのプロセスには、要件定義、設計、製造、テストなどがあります。それらのプロセスにおける成果物を定義します。また、これらのプロセスで守るべき、設計基準や品質尺度なども定めます。
【標準の明文化】
このようにして定めた組織の標準は、組織標準として文書化し、組織内で誰もが参照容易なようにして組織へ普及定着を図ります。
次回は、標準の定着化について具体的に述べます。