組織のPMOの重要な業務として、組織のプロジェクトマネジメント力の強化があります。前回、前々回は、組織のプロジェクトマネジメントの標準化とその普及をテーマに話しました。今回はプロジェクトマネジメントのツールや標準書式の整備と普及についてお話しいたします。
前回お話したプロジェクトマネジメントの標準化活動では、PMOは、通常は組織の「プロジェクトマネジメント標準」を定めます。組織のプロジェクトでは、これを参照し、プロジェクトに見合う形で適用します。プロジェクトマネジメントのスキルが不足しているプロジェクトに対しては、PMOはプロジェクトが標準を適用しやすいように支援する必要があります。
「プロジェクトマネジメント標準」は組織のプロジェクトマネジメント活動の基本を定めますが、適用の具体性が欠ける表現等になっている場合があります。
そこで、PMOは、組織のプロジェクトマネジメントの効率化を図るために、「ツール」を定めたり開発したりします。また、「標準書式」を開発し、組織に普及を図ります。「ツール」や「標準書式」はプロジェクトにとって利用しやすいように作ることで、個々のプロジェクトマネジメントの効率を向上させ、ひいては組織のプロジェクトマネジメント力を向上することができます。
1.「ツール」
ツールとは、プロジェクトマネジメントを遂行するためのプロセスを効果的に進めるための道具や仕組みのことです。
具体的には、
- 進捗管理システム
- コスト管理システム
- 品質管理システム
- 変更管理システム
- リスク管理システム
- コミュニケーションシステム
などの整備が必要です。
大きな組織では、組織でサーバを準備し、組織内のプロジェクトに共通の仕組みを適用することも可能です。小さな組織では、進捗やコストを管理するプロジェクトマネジメントツールのパッケージを適用することも可能です。
また、これらの「ツール」には、PCのソフトウェアだけではなく、通常は会議体と組み合わせた運用が必要です。進捗会議、品質確認会議、変更管理委員会等の会議体を設置し、運用しましょう。
2.「標準書式」
プロジェクトでは、プロジェクトマネジメントや成果物に関して、中間成果物や最終成果物を作ります。成果物の書式のサンプルとなるものを「標準書式」と呼びます。
またはテンプレートと呼ばれます。PMOが組織の「標準書式」を定めておくことで、プロジェクトの運営は効果的に進められます。
具体的には
- プロジェクトWBS
- プロジェクトマネジメント計画書
- 日程計画表
- 品質管理表
- コスト管理表
- 課題管理表
- 調達管理書式
等があります。
これらの標準書式は、内容が未記入でもよいですが、組織によっては、過去プロジェクトの事例や組織の標準値を反映させた標準書式を整備することで、さらに組織のプロジェクトマネジメント力の向上に寄与できます。
3.ツールや書式の制定における留意事項
ツールや標準書式の制定も、標準の制定と同様に、組織のプロジェクトが実行できることが重要です。従って、組織のマネジメントレベルに見合って定めることが重要です。ツールの整備には、コストがかかる場合もありますので、組織で許容できるコストを考慮する必要があります。また、標準書式の制定には、過去のプロジェクト資産の活用を考えましょう。
4.普及
PMOは、制定したツールや標準書式を組織に普及させるための活動を行います。
最初に行うことは、プロジェクトが起動したときに、プロジェクト・マネジャーはプロジェクトの標準、ツール、標準書式を定めます。PMOは、プロジェクト・マネジャーが、プロジェクトが組織の標準、ツール、標準書式を適用するように支援します。
プロジェクト開始後は、プロジェクトにおけるツールや標準書式の適用状況をモニタリングし、適用を推進します。また、ツールや標準書式に問題があれば改善を行います。