組織のPMOの重要な業務として、組織のプロジェクトマネジメント力の強化があります。第6回、7回は、組織のプロジェクトマネジメントの標準化とその普及をテーマに話しました。第8回はプロジェクトマネジメントのツールや標準書式の整備と普及について話しました。今回はプロジェクトマネジメントの強化の一環として、「技法」についてお話しいたします。
PMOは組織の「プロジェクトマネジメント標準」を定めます。組織のプロジェクトでは、これを参照し、プロジェクトに見合う形で適用します。PMOはプロジェクトが標準を適用することを支援します。
「プロジェクトマネジメント標準」は、適用について具体性が欠ける場合があります。
そこでPMOは組織のプロジェクトマネジメントの効率化を図るために、ツールや標準書式を開発し、プロジェクトに適用します。
PMOはさらに、プロジェクトマネジメントの効率化を図るために「技法」を定めます。技法とは、“定義済みの系統的な手順のこと”です。ツールはソフトウェア、プログラム等ですが、技法は手順、手法、考え方等が文書として記述された形で提供されることが基本です。実際には、電子化された表計算シートやチェックシート形式で提供される場合もあります。
1.「技法」の種類
技法にはプロジェクトマネジメントエリアに対応して多くの技法があります。
具体的な例を以下にあげます。
- クリティカルパス法
- リードとラグの適用
- コスト見積もり技法
- アーンド・バリュー・マネジメント
- 品質管理技法
- 人材育成手法
- コンフリクト・マネジメント
- コミュニケーション手法
- リスク管理手法
- プロポーザル評価技法
この他にも多くの技法があります。PMBOK®を参照してください。
PMOは、これらの技法を整備することで、プロジェクトマネジメントの効率化や組織としてのプロジェクトマネジメントの能力の向上に寄与できます。
2.「技法」の制定における留意事項
技法も標準やツールと同様に、組織のプロジェクトが実行できることが重要です。
特に技法をプロジェクトに適用するためには、プロジェクト・メンバーが技法の内容を十分に理解することが求められます。1項の技法を見ても、アーンド・バリュー・マネジメント等の難しい技法もあります。また、技法の解釈も多様になりがちです。
1項で挙げた技法は、組織にとって、プロジェクトが実施すべき重要な要素が多く含まれています。組織にとっては、従来から継承してきた技法がありますので、そのような場合は、それらの資産を継承をすることが重要です。また、技法は、組織ごとに固有の手法、方法論であることも考えられます。たとえば、品質管理技法は、組織によって固有の管理技法が多くみられます。
このように、組織のプロジェクトマネジメントの水準や、組織が資産としてきた技法を考慮し、適切な技法を選択し、適切な水準に制定することが必要です。定めた技法は、プロジェクトマネジメント水準の向上や環境の変化に伴い、見直しを行います。
3.「技法」の普及
PMOは、技法を標準やツール等とともに、組織に定着させる必要があります。特にプロジェクトマネジメントのQCDに関する技法は、組織のプロジェクトで統一的に適用するように普及させることが重要です。技法の適用には、技法の理解が必要ですので、普及のためには組織に対して技法の教育を考慮することが重要です。
そして、各プロジェクトに対しては、プロジェクトの開始時に、標準、ツール、技法の適用を支援します。具体的にはこれらの適用をプロジェクトと協議し、プロジェクトマネジメント計画書に記載します。プロジェクト遂行中は、技法の適用状況をモニターします。適用に問題があれば、適用方法の改善を指導したり、技法の改善を行います。