組織のPMOの重要な業務として、組織のプロジェクトマネジメント力の強化があります。第3回から第9回までは、標準化、ツール、技法の整備を中心に話しました。
今回からはプロジェクト・マネジャーの人材育成やスキル向上について話します。
今まで話してきた、プロジェクトマネジメント標準やツール/技法などの方法論が整備された後は、組織のプロジェクトマネジメント力を支える、プロジェクト・マネジャーの育成が重要になります。
プロジェクト・マネジャーの育成については、プロジェクト・マネジャーが属するライン組織が教育部門と連携して実施することが一般的です。
PMOは、組織のプロジェクトマネジメントの方向や必要性を考慮して、組織の経営層、人材開発部門、プロジェクトのライン部門などと連携を取り、プロジェクトマネジメントの専門家の立場からプロジェクト・マネジャーの人材育成を進めていく必要があります。
最初に、組織が必要とするプロジェクト・マネジャーを確保するために、プロジェクト・マネジャーの要員管理が必要です。
組織は、組織の目標を達成するためにプロジェクトを遂行します。組織の中期計画などを参考にし、どのようなプロジェクトがいつ立ち上がるかを認識します。組織では、どのようなスキルを持ったプロジェクト・マネジャーがいつ、何人程度必要であるかを管理するプロジェクト・マネジャー要員計画の立案を支援します。
次に、プロジェクト・マネジャー要員計画に沿って、最適なプロジェクト・マネジャーをアサインするためには、プロジェクト・マネジャー要員情報管理が有効になります。そのためには、組織のプロジェクト・マネジャー人材のスキルに関する情報を一元管理するDBを作成することが有効です。
管理する情報は例えば以下のような情報です。
- 経験したプロジェクト(成果物内容、開発規模、金額規模、工数規模など)
- プロジェクト・マネジャー経験年数
- プロジェクトマネジメントに関する専門知識、資格
これらは人事情報になりますので、構築する場合は組織の人事部門やプロジェクト部門と緊密な連携の元で構築し、管理する必要があります。
PMOは、組織のプロジェクト・マネジャー要員情報管理を行う場合、どのような情報の収集が必要か、どのように管理を行うかなどについて、組織内の各部門と調整をとり、構築や運営に貢献します。
次にプロジェクト・マネジャーのアサインについて話します。
新たにプロジェクトが設立された場合は、プロジェクト・マネジャーがアサインされますが、プロジェクトの特性に合ったプロジェクト・マネジャーをアサインすることが重要です。プロジェクト・マネジャーのアサインは、組織の経営者やプロジェクト部門の部門長が、プロジェクト・マネジャー要員情報などを参考にアサインすることが一般的です。
PMOは、プロジェクト・マネジャーのアサインに関し、決定者に対して、適切性の助言をしたり、候補者の現在の業務繁忙状況などを報告し、アサインの支援を行います。
次に、プロジェクト・マネジャーの育成のためには、キャリアパスの検討が必要です。
プロジェクトマネジメントは、経験を積むことで向上します。PMOは組織の人材育成方針を認識し、人事部門、教育部門などと連携し、プロジェクト・マネジャーのキャリアパスの制定に貢献します。
たとえば次のようなキャリアパスが考えられます
プロジェクト・メンバー
プロジェクト・メンバーとして、技術的な担当をする中で、プロジェクトマネジメントの基礎的な知識を学びます。
サブプロジェクト・マネジャー
プロジェクトマネジメントの体系的なトレーニングを受けて、プロジェクトの一部のマネジメントを分担します。
独立したプロジェクト・マネジャー
プロジェクトマネジメントの経験を積むことや、高度なトレーニングを受けることで、一定の規模の独立したプロジェクトを単独で遂行できる水準に達します。
大規模/複雑なプロジェクト・マネジャー
さらに規模の大きなプロジェクトや難しいプロジェクトを実践することで、多様なプロジェクトの実践力を習得します。