組織のPMOの重要な業務として、組織のプロジェクトマネジメント力の強化があります。第10回からは、組織の人材育成の面を話しています。第11回ではプロジェクト・マネジャーのコンピテンシーについて、第12回ではプロジェクト・マネジャーのトレーニングについて話しました。今回はPMコミュニティーについて話します。
1.PMコミュニティーとは
「PMコミュニティー」は、プロジェクト・マネジャーの育成にとって重要な要素と考えられます。コミュニティーにはいろいろな意味がありますが、PMコミュニティーは、実践コミュニティーの考え方に基づいています。
実践コミュニティーは、“ある分野における知識の習得や研さん、あるいは知識を生み出すといった活動のために、持続的な相互交流を行っている集団”のことです。実践者が専門的なスキルを向上させるためには、同じような状況に直面する人々が交流することが必要であるとされています。
企業や組織内では、部門が異なっていても、多くのプロジェクト活動が行われています。あるプロジェクトで発生した問題は、他のプロジェクトでも発生する可能性があります。プロジェクトで発生した問題への対策は、後続プロジェクトで活用できる可能性があります。このような情報は、組織全体で共有を図る必要があり、PMOがこのような情報を収集し、分析、整理して組織で活用できるデータベースなどを整備することが必要です。
しかし、このような情報では十分な情報共有は難しく、さらに高いレベルの情報共有を行うためには、思いを持つプロジェクト・マネジャーなどによる非公式なネットワークを形成し、情報共有、ノウハウ活用を図ることが大切です。
2.PMOの役割
企業や組織のプロジェクト・マネジャーは、他のプロジェクトマネジメントの方法を学ぶためにネットワークを形成することが必然的に発生します。ネットワークの発生は、自発的であったり意図的であったりします。また、関心がある領域は、専門領域が同一である場合や、共通の事業の成功を目指している場合もあります。
PMOは、PMコミュニティーがプロジェクト・マネジャーの能力向上、ひいては組織のプロジェクトマネジメント力向上に成果を発揮するように支援します。
- 新たなPMコミュニティーの開始の支援
- コミュニティーのコアメンバーを見つけます。
- コアメンバーのモチベーションを維持するために、活動の場の設定(会議や会議室の設定など)や、コミュニティーで扱うテーマの設定を支援します。
- 人のつながりを活用して新たなコミュニティー活動をPRします。
- 賛同を得たメンバーがコミュニティーに参加し、メンバー拡大を図ります。
- PMコミュニティーの運営支援
- 多くのメンバーがコミュニティーに参加できるようにします。参加者には、コアメンバーだけではなく、積極的なアクティブメンバー、多くの一般メンバーがいます。
コミュニティーの活動を維持するためには、メンバーの都合に合わせて役割の交代ができるようにすることが必要です。 - コミュニケーション手段として、組織内のメーリングリストの利用やデータベースの利用を支援します。
- 必要に応じて、活動テーマに合わせた事例提供などを行います。
- PMコミュニティーの活動報告会などの企画
PMOは、コミュニティーに発展する活動を支援します。例えば次のような活動を行います。
PMコミュニティーは、本来はコアメンバーの主体的活動がベースですので、PMOの上記のような活動があくまで支援活動となることに留意する必要があります。
PMOは、設立されたPMコミュニティーが継続的な活動を行えるように支援します。PMコミュニティーは、自主的活動ですから、長期間継続することは難しいといえます。そのため、次のようなことに留意します。
PMコミュニティーの活動をさらに組織として支援する場合は、コミュニティーの自主性を重んじたうえで、PMコミュニティーの活動報告会やワークショップなどの企画を行います。