組織のPMOの重要な業務として、組織のプロジェクトマネジメント力の強化があります。今回からは、プロジェクトマネジメントに関する情報の管理について話します。
組織のプロジェクトマネジメントに関する情報は、大別すると、知的資産、教訓、プロジェクト情報の3つに分類できます。今回は知的資産について話します。
1.知的資産とは
ここでは、「知的資産」とは、組織目標を達成するためのプロジェクトマネジメント活動の全般に関する有益な情報や成果物などのことを言います。PMOは、これらの情報を収集し、参照や再利用ができるように分類や管理を行います。
2.知的資産データベースの構築
PMOは、知的資産をプロジェクトなどが利用するために、知的資産データベースを構築します。
知的資産は、プロジェクトなどからデータの登録が可能なようにする必要があります。また、登録されたデータは、PMOなどが加工しやすいようにする必要があります。さらに、組織のステークホルダーが利用しやすいように、データに検索用キーワードを付けることなどが必要です。さらに全文検索機能があれば、利用者に利便性を与えることができます。
PMOは、このような機能を持つデータベースを構築し、分類したデータを格納したデータベースを維持することが求められます。
3.知的資産の収集
組織のプロジェクトマネジメントにとって有益な情報や成果物は、組織内のプロジェクト・マネジャーやプロジェクト・メンバーが保有しています。有益な情報については、形式知として明確になっておらず、関係者の頭の中で暗黙知となっている場合があります。また、社外にも組織のプロジェクトマネジメントにとって参考になる有益な情報は多くあります。
PMOは、社内外の知的資産をタイムリーに収集できる体制を整備します。このためには、知的資産をデータベースに登録できる機能があることが望まれます。大規模組織の場合は、プロジェクトだけでなく、PMOなどの有識者が、組織内外の有益な情報をデータベースに登録することが必要です。
4.知的資産の体系化
PMOは、知的資産が組織にとって活用しやすいように、体系を定め、分類をします。この体系は、組織のプロジェクトマネジメント目標と整合を取って定める必要があります。
簡単な分類の例を示します。
- 組織体の環境要因;組織目標、組織の規格、公的規格、市場情報、ステークホルダー情報、リソース情報 など
- 組織のプロセス資産;業務規定、品質管理規定、コスト管理規定、フェーズ終了判定規定、各種テンプレート など
- 一般的な有益情報;プロジェクトマネジメントのノウハウ/Tips、プロジェクトマネジメント成功事例 など
知的資産は、階層化した体系を定め、分類をしてデータベースに格納することで、利用者の利便性が高まります。
5.知的資産の有効性の評価
PMOは、知的資産の有効性を評価します。有効性とは、参照度、情報の価値、情報の鮮度などです。PMOは登録されている情報の検索状況や別途の調査などにより、知的資産の有効性を評価します。
知的資産が十分に活用されていないときには、知的資産管理に関する運用に問題があるか、登録されている知的資産に問題があるかを明確にします。運用の問題であれば改善策を実施し、参照頻度の低い知的資産はデータベースから削除し、有効性の高いデータベースを維持します。
6.知的資産のプロジェクトへの適用支援
知的資産は、開始して間もないプロジェクトにとっては、知られていない場合があります。PMOは、プロジェクト開始にあたり、知的資産の活用の促進を支援します。
また、プロジェクト終盤では、プロジェクトの暗黙知を知的資産として登録するように促進します。