組織のPMOの重要な業務のうち、今回からはプロジェクト支援業務についてお話しいたします。プロジェクト支援業務は、組織のPMOが実施する基本的な業務です。多くの組織のPMOが最初に取り組んでいる業務になります。今回は、このうち、プロジェクトマネジメント計画書の作成支援業務についてお話します。
1.プロジェクトマネジメント計画書とは
プロジェクトは、プロジェクト憲章に従って、プロジェクト全体をどのように進めていくか詳細な計画を策定します。このためにはプロジェクトを取り巻く多くの情報を参照します。プロジェクトマネジメント計画書は、管理指標となるスコープ、コスト、スケジュールベースラインと、具体的なマネジメント方法を記述した補助計画書から構成されます。
プロジェクトマネジメント計画書は、ステークホルダーの承認後、プロジェクトの実行に入りますが、実行中のプロジェクト状況の変更に対応してプロジェクトマネジメント計画書も変更し、プロジェクト終結まで維持します。
2.プロジェクトマネジメント計画書の重要性
プロジェクトマネジメント計画書は、プロジェクト・マネジャーを中心に作成されます。プロジェクトの成功は、プロジェクトマネジメント計画の良否で決まるといっても過言ではありません。あいまいな計画や無理な計画を立案してプロジェクトを開始すると、人、金、モノといったリソース不足がプロジェクト遂行期間に露見し、プロジェクトが危機に陥ります。
3.プロジェクトマネジメント標準化による対応
PMOは、プロジェクトが妥当性のあるプロジェクトマネジメント計画書を作成できるよう支援を行います。
まず、既にお話した業務ですが、プロジェクトマネジメントの標準化の業務として、「プロジェクトマネジメント計画書作成標準」を制定します。この標準では、プロジェクトマネジメント計画書に記載すべき項目を定めます。これにより、組織として必要なプロジェクトマネジメント計画立案に漏れを無くすことができます。
また、プロジェクトマネジメント計画作成時に参照すべき品質基準などのメトリクスや、リソースの基準(リソースの標準単金など)も添付しておくと便利です。
さらに、プロジェクトマネジメント計画書の承認ルートを定めます。通常、承認者はプロジェクトのスポンサーが該当します。
「プロジェクトマネジメント計画書作成標準」では、不慣れなプロジェクト・マネジャーなどには具体的にイメージがつかない場合があります。このような場合は、具体的なプロジェクトのプロジェクトマネジメント計画書を、テンプレートとして提供することが効果的です。
4.プロジェクトマネジメント計画書審査
次に、プロジェクトが作成したプロジェクトマネジメント計画書の妥当性を、PMOが第三者として審査する仕組みを作ることが重要です。特に大規模プロジェクトなどの場合は、プロジェクトが気づかないプロジェクトマネジメント計画の問題点を、プロジェクトマネジメント計画書審査で是正することは、プロジェクトの成功確率を高めるうえで、重要です。
PMOは、プロジェクトマネジメント計画書審査対象のプロジェクトマネジメント計画書が作成されたあと、審査会を開催します。
まず、組織のプロジェクトマネジメント計画書作成標準で定められた項目がもれなく記述されていることを確認します。次に、スコープ、コスト、スケジュールベースラインの妥当性を確認します。これらは、組織や顧客のプロジェクトに対する要求と整合が取れていることが必要です。
次に、人や費用の投入計画が、スケジュールと妥当性があり、無理がないかを確認します。例えば、要員計画の場合、計画上の工数では投入可能であっても、実際にアサインする要員のあてが無い場合は、リスクになります。
また、補助計画書に記述された、コスト、タイム、品質、リスクなどのマネジメント計画書が実行可能であるかを確認します。
さらに、プロダクトの工程ごとに適切な成果物が作成される計画であることを確認します。また、初期のリスク一覧表が作成され、初期のリスクとリスク対応策などが管理されていることが必要です。
プロジェクトマネジメント計画書審査では、上記のような事項を審査し、改善提案などを「プロジェクトマネジメント計画書審査報告書」としてまとめ、プロジェクトやスポンサー、必要ステークホルダーに通知します。
プロジェクトは、報告書に記述された改善提案に従って、プロジェクトマネジメント計画書を改訂します。