組織のPMOの重要な業務のうち、前々回からプロジェクト支援業務についてお話ししています。プロジェクト支援業務は、組織のPMOが実施する基本的な業務で、多くの組織のPMOが取り組んでいる業務です。今回は、このうち、プロジェクトモニタリングについてお話します。モニタリングは多くの組織のPMOにとってきわめて大切な機能ですので、是非実践するようにしましょう。
1.モニタリングの実施方法
プロジェクトモニタリングの目的は、重要プロジェクトなどがプロジェクトの目的を達成するよう、第三者としてプロジェクト状態を継続的に確認・評価し、プロジェクトを成功に導くことです。
プロジェクト状態を確認する方法にはいくつかあります。
- プロジェクト・マネジャーからヒアリングをする方法
- プロジェクトのプロジェクト報告書を参照する方法
- プロジェクトの定例の進捗会議にオブザーバ参加する方法
1. の方法は、プロジェクト・マネジャーに対してPMOに報告する負荷をかけるため、プロジェクト・マネジャーからは好まれません。
2. の方法は、報告書の内容が不確実な場合、確認に手間がかかります。
モニタリングとして適している方法は3. になります。プロジェクトの進捗会議にオブザーバ参加する場合には、プロジェクトに追加の作業は発生しません。PMOは、進捗会議で報告される資料を収集し、プロジェクト・マネジャーとメンバーでやり取りするプロジェクト状況の会話を確認できますので、リアルな状況が収集できます。
2.確認事項
進捗会議では、サブリーダなどから「作業状況概要」「スケジュールの予定と実績」「品質の予定と実績」「コストの予定と実績」などが報告されます。
また、リスク管理表や課題管理表が報告されます。
これらの報告に対して、プロジェクト・マネジャーとの質疑が行われます。
上記のやり取りから、”スケジュール、コスト、品質状況”を認識します。また、リスクや課題の状況を認識します。
このとき、PMOは第三者として正確な情報を把握することが必要になります。上記の確認事項が、客観的であるか、定量的であるかに注意を払い、情報を収集することが必要です。
さて、次の会話から、あなたがPMOである場合どのように評価しますか?
○プロジェクト・マネジャー:「Aさん、Bさん、進捗状況を説明してください」
○Aさん:「先週同様で”まあまあ”の状況です」
○Bさん:「少々遅れていますが、頑張っていますので心配いりません」
これでは進捗状況、さらには進捗管理方法について正確な情報を得ることができませんね。
3.プロジェクト状況の分析
PMOは、スケジュール、コスト、品質の予定と実績の差異を第三者視点で判断します。差異は定量的や客観的に表現する必要があります。予定と実績の差異が大きな場合は問題ですので、対応策を検討し、提言することが必要です。
また、リスクが残っているときには、リスク回避策や発生時の対応策を検討し、リスクによる影響を最小限にする必要があります。課題が残っている場合には、課題の解決案を提示し、解決を促進する必要があります。
4.モニタリング報告書の作成
PMOは、モニタリングで確認したプロジェクト状況、認識したプロジェクトの課題事項、課題を解決するための改善提案をモニタリング報告書としてまとめます。
モニタリング報告書は、プロジェクト、プロジェクトの部門長、プロジェクトのスポンサーなどのステークホルダーに報告をします。また、プロジェクト状態で経営にインパクトがある問題を検知した場合は、スポンサーにエスカレーションを行います。
プロジェクトでは、報告書を参考にしてプロジェクト状態の改善を行います。プロジェクトでは、報告書の内容に疑問点等がある場合にはPMOに質問をします。
PMOは、報告書で改善提案を行った個所については、プロジェクトが改善を実施していることを継続してフォローし、問題を解決するよう支援を行います。
5.モニタリングの留意点
PMOはプロジェクトの進捗会議に参加すると、いろいろなことに気づきます。
進捗会議はプロジェクト・マネジャーが主催者で、プロジェクト・メンバーとのコミュニケーションの場です。PMOは、進捗会議の場で発言をしたい場合が出てきます。
進捗会議はプロジェクトとPMOの会議の場ではありませんので、主旨をわきまえて、発言はできるだけ控えることが望ましいでしょう。
PMOはプロジェクト・マネジャーに質問や連絡がある場合には進捗会議が終了した後に質問をしたり、コメントするようにいたします。