組織のPMOの重要な業務のうち、前々回からは、PMOの経営支援についてお話ししています。
前回は“重要プロジェクト情報把握と可視化報告”についてお話ししました。
今回は、“リソース管理支援”についてお話しします。
1.組織目標とプロジェクトのリソースの関係
組織には組織のビジョン、ミッションを達成するために組織目標が定められています。
組織目標を達成するために組織が利用できるリソース(人、金、物など)は、組織の中期計画や年度計画で予算化されます。
組織は、この限られたリソース計画の範囲内で活動を行い、組織目標を達成する必要があります。
個々のプロジェクトにも、費用、要員などのリソース計画が定められます。
このリソース計画は、プロジェクトの制約条件として定められた費用や要員の範囲内で計画する必要があります。
プロジェクトのリソース制約は、組織のリソース計画の範囲内で定められています。
従って、プロジェクトがリソース計画を超過して費用や要員を投入した場合には、プロジェクトコストが損失になるだけでなく、組織のリソース計画の実行にも大きな影響を及ぼすことになります。
特に、ITベンダーのように、プロジェクトの遂行そのものを収益の源泉としている組織においては、プロジェクト遂行時のリソース超過は、組織の経営に大きなインパクトを及ぼしかねません。
2.PMOによるリソース管理支援の役割
組織のPMOは、組織のリソース管理の視点から、「プロジェクトが決められたリソースの範囲の中でプロジェクトを遂行していること」「第三者として監視すること」を大きな役割としています。
PMOは、プロジェクトのリソースが定められたリソース計画から外れないように監視し、問題が起こらないようにプロジェクトに警告を出します。
これにより、プロジェクトはリソースに関するリスクの発生を未然に防止するように処置をします。
また、リソース超過を起こさないように、プロジェクトの上位マネジメントや経営層にも同様に警告の情報を発信します。
3.リソース管理支援の具体的な方法
PMOの第三者としての具体的なリソース管理支援の方法をお話しします。
最初に、プロジェクトが作成したプロジェクトマネジメント計画書の確認を行い、この時にプロジェクトのリソース状況確認を行います。
確認の観点は、プロジェクトのコスト計画や要員計画は、組織で定められた計画と整合性がとれているかどうかです。
この時点で整合性が取れていない場合は、組織の計画とプロジェクトの計画に認識のずれがあります。
組織の計画部門、プロジェクト等と整合性を調整するよう働きかけが必要になります。
プロジェクト開始以後、PMOは、プロジェクトのモニタリング、プロジェクト審査などの活動で、プロジェクト情報を収集し、この情報からリソースの状況を確認します。
この時の確認の観点は、プロジェクトのリソースの実績が、予算計画、要員計画通りに進捗しているかどうかです。
コストについては、例えば予算より5%程度下位を警告値に設定し、警告値を超過したらプロジェクトに警告を提示するような対応が必要です。
プロジェクトには、コスト増大の原因分析と対応策を求めます。
組織の経営層もコスト超過にはプロジェクトに厳しい対応を求めます。
PMOは、経営層にも早期の警告情報を提示することが必要です。
コスト超過は、回復が難しいため、コスト超過を起こさないよう、コスト超過のリスクを事前に検知し、早期に対応策を実施することが重要です。