組織のPMOの重要な業務のうち、PMOの経営支援についてお話ししています。
前回は「経営層の意思決定支援」の中で「プロジェクト審査制度」についてお話ししました。
今回はその2回目として、審査のタイミングや審査観点についてお話しします。
1.プロジェクト審査制度とは(復習)
プロジェクトのスポンサー(経営層、事業部長など)が、プロジェクトのリスクを早期に判断し、スポンサーとしての対応を指示する仕組みを「プロジェクト審査制度」といいます。
組織によっては、「フェーズ終了判定会議」とも呼びます。
この狙いは、経営層やスポンサーが、重要なプロジェクトの状況を自ら認識し、組織としてプロジェクトの施策やリスク対応策を実施し、組織目標の達成やプロジェクトの成功を確実にすることにあります。
2.PMOの支援内容(復習)
組織に既に「プロジェクト審査制度」が構築されている場合は問題ありませんが、そのような制度がない場合は、PMOはこのような制度の設立の推進を行います。
PMOは、組織の重要なプロジェクトに対して、プロジェクト審査会を開催します。
審査会では、重要なプロジェクトは所定のプロジェクト報告を実施します。スポンサーはプロジェクト状況を認識し、リスク対応などの指示を行います。
PMOはスポンサーの意思決定支援を行います。
PMOは会議での決定事項を「プロジェクト審査報告書」にまとめ、プロジェクトやステークホルダーに通知します。
プロジェクトは指示事項を実施します。
3.ITベンダーにおけるプロジェクト審査制度
ITシステムの構築を請け負うITベンダーのプロジェクト審査制度を見ていきましょう。
- 審査タイミング
- 審査の着眼点
ITベンダーでは、システム構築中に、基本設計、詳細設計、製造、単体試験、結合試験、総合試験の各工程終了時の審査を行います。
さらに、システムを受注するタイミングで「受注審査」を行います。
また、全ての開発が終了した後で、「出荷判定」を行います。
受注審査では、システム構築を受注した場合の損益見込みの判断を行います。
ITベンダーでは、システムを請け負い、プロジェクトを成功させることで利益を得ます。
受注審査の時の判断が非常に重要です。
システム構築中の各工程では、QCDの状況とリスクの状況が重点的に確認されます。
特に、コストが超過しないかが重要な観点です。
出荷判定では、製品としての品質が確保されており、出荷後に不良が発生しないように品質が確保されていることが最大の着眼点となります。
4.ITシステム発注者におけるプロジェクト審査
ITシステム発注者におけるITシステムの意義は、自社の目標達成の手段に位置づけられます。
- 審査タイミング
- 審査の着眼点
ITシステム発注者では、ITシステム構築中の審査とともに、発注時の審査、受け入れ審査、システム構築後の稼働時の審査が重要です。
ITシステム構築は、ITベンダーが実施することが多いので、審査の観点はITベンダーとは異なります。
発注審査では、発注する要件、発注の形態、予算、プロジェクト規模、プロジェクトマネジメント方針が妥当であるかを審査します。
発注時にこれらの視点が明確でないと、プロジェクトが開始してから支障がでます。
ITシステム構築における重要な審査は、基本設計工程終了に伴う審査です。
ここでは、基本設計書が妥当であり、必要な要件定義がもれなく盛り込まれていることを確認します。
その要件に沿って基本設計が実施されていることを確認します。
受け入れ審査では、発注者の成果物の要件を充足しており、品質を満たしていることを確認します。
稼働時の審査では、利用部門で運用が適切に実施できるかを確認します。
5.製品開発プロジェクトにおけるプロジェクト審査
製造業などでは、新製品を開発するプロジェクトが多く発生します。
審査タイミングは、開発工程終了時や各月ごとに定期審査として行われます。
新製品開発プロジェクトでは、競合他社の状況や法律の改訂などの外部環境の変化により、プロジェクトの方向を変更する必要があります。
プロジェクト審査でも、外部環境の変化を確認し、組織としての対応を決める方向付けが必要です。