前回までの長い期間、PMOの機能についてお話をしてきました。
今回からはPMOの運用の視点で、いくつかのトピックスをお話したいと思います。
それではまず、PMOの設立目的について考えましょう。
1.PMOの定義
PMOの定義は、PMIの【PMBOK(R)第5版】では、「組織内のプロジェクトを統制する仕組みを作り、実行していく組織である」こととされています。
そして、責任は、「プロジェクトマネジメントを支援したり、直接マネジメントしたり、広範囲にわたる」と記述されています。
最近、【PMBOK® 第6版】が公開されました。
これによると、定義は第5版とほぼ同様です。
ただし、説明では、組織目標を達成するための活動が強調されているように思います。
上記の【PMBOK®】の定義は、非常に広範囲に及ぶ記述がされています。
これは、実際のPMOの活動領域が多様であることを示しています。
2.日本のPMOの活動領域
日本では、ITシステム構築プロジェクトにおいて、発注者側と受注者側(ITベンダー)が見られるのが特長です。
このことを考慮して、PMOの活動領域を述べます。
- 発注者側のPMO
- ITベンダーのPMO
発注者側組織では、組織目標を達成するために、通常、多数のプロジェクトが同時並行的に実施されています。
たとえば、コンビニ事業では、新製品開発プロジェクト、流通合理化プロジェクト、店舗立地最適化プロジェクト…などが実施されています。
最近は、発注者側では他社との競争環境が厳しく、プロジェクトの目標が外部環境により変化したり、プロジェクトの優先度も考慮する必要性が生じています。
このような環境では、PMOには個別プロジェクトの実行状況だけではなく、組織目標を達成するために、自組織の環境を考慮し、経営層によるプロジェクト目標の設定や優先度の判断を支援することが求められます。
ここでは、分類を”発注者側”としましたが、組織目標を達成するためには、組織改革プロジェクト、売り上げ拡大プロジェクトなど、ITシステムの構築をベンダーに依頼しないプロジェクトも存在します。
このような意味で、この分類は”自社プロジェクトのPMO”とも呼ばれます。
ITベンダーでは、上記の(1)の発注者側組織より、ITシステムの構築や改造を請け負い、その業務を完成させることをビジネスとしています。
すなわち、ITベンダーでは、受注したプロジェクトを完遂することで利益を得ることが組織にとって重要な目標です。
従って、ITベンダーのPMOに求められることは、個別プロジェクトの遂行支援にとどまらず、組織の利益確保を達成することの支援が重要です。
そのための基本は、個別プロジェクトの予算遂行状況か予算計画を上回らないようにモニタリングし、必要な施策を打つようにアドバイスすることが重要になります。
3.PMOの設立目的
上記に説明したようにPMOの定義では、PMOの役割は広範に渡りますが、日本の組織においては、発注者側のPMOと受注者側のPMOに期待される大きな役割があります。
実際の組織では、経営層の方針や組織目標、重要なプロジェクトマネジメントの問題点などを考慮して、経営層が承認します。
設立目的には、以下のようなものが見られます。
- プロジェクトの失敗防止
- 重要プロジェクトのモニタリング
- プロジェクトマネジメントの標準化
- プロジェクト・マネジャーの育成
- 経営層へのプロジェクト状況の報告
など、多彩な設立目的があります。
PMOは、組織のPMO設立目的を十分に認識したうえで、活動をする必要があります。PMOの皆さんは、自組織のPMOの設立目的を必ず認識しましょう。