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第3回:ストレス対処の「レパートリー」 

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突然ですが皆さんの、お料理のレパートリーは多いほうですか?

たとえば同じ豆腐という食材を前にして、「…豆腐は冷奴だ。冷奴あるのみ」という方と麻婆豆腐に揚げ出し豆腐にゴーヤチャンプルに入れてもいいかも、という方では食生活に大きな差が出てきそうですね。

実はストレス対処にもレパートリーがあり、このレパートリーの差が私たちの毎日の生活の健康度に影響を及ぼしているのです。

みなさんは仕事やプライベートで何か嫌なことがあったり、厄介な事態に直面したとき、どんな行動をとりますか?

  • 「問題の原因を分析して対策を考えます」…ごもっとも。
  • 「お酒を飲んでさっさと寝る」…なるほど。
  • 「何もしませんよ。ひたすら耐えるのみ」…こういう人もいますね。

これらの行動はすべて「ストレス対処(=ストレスコーピング)」と表現することができます。ストレスコーピングは、意識的あるいは無意識に行っている、遭遇したストレッサーの負担を軽くするための努力をさします。この対処の違いがストレス反応の出方を決める(一端である)、ということは前回お伝えした通りです。

ということは、「この対処法が優れていて、この対処法はよくない」という優劣があるということでしょうか。

その答えの前に。

ストレスコーピングは大きく分けて2種類の方向性があります。
一つは「問題焦点コーピング」、もう一つは「情動焦点コーピング」です。

「問題焦点コーピング」は問題そのものを解消することでストレスを減少させようとすることです。たとえば、仕事上でトラブルが起きたのであれば、それを解決するまで休まず働き続ける、自分では解決できないことがあるなら得意な人に聞く、誰かの仕事の進め方が問題であるならその人に注意をする…などなど。

一方、「情動焦点型コーピング」はストレスフルな状況で生じる不快な感情を鎮めようとすることです。たとえば、同僚や家族など周囲の人に辛い気持ちを聞いてもらったり、趣味や好きなことに没頭して気分転換してみたり、「しかたがないか」と受け入れてみたり、「これは成長の糧なんだ」と捉え直してみたり…などなど。
いわゆる気持ちをなだめる、落ち着ける、気分を変える、といった方向の試みです。

さて、このように聞くと、なにやら「問題焦点コーピング」のほうが優れているような気がする人もいるかもしれません。だって、根本原因を無くそうという試みなんですから。

その場しのぎの「情動焦点コーピング」なんてしている暇があればまずは問題対処すべき、と考えるのは一理あるような気がしますね。

ところが一概にそうはいえないのです。

たとえば私たちにとって身近な人との死別は大きなストレスですが、ではここで問題を解消しようとしたら?

「死んだ人に生き返ってもらう」…これは無理な話ですね。

ここでは「いかにこの悲しみから立ち直っていくか」という情動焦点コーピングの出番になるわけです。

あるいは普段の仕事で直面するストレス状況でも然り。
段階的詳細化という言葉がある通り、特にプロジェクトを立ち上げたばかりの頃は、自分の役割も進め方のルールもわからない、曖昧な状況の場合もありますね。

そのようなときに、「早く自分の仕事を明確にしてください!」とプロマネに詰め寄ったところで(問題解決を試みたところで)、事態が変わることはあまりないでしょう。むしろ、「少々気が焦るけど仕方がない、少し待てば体制も整うだろう」と考えられる人のほうが適応的ですね。(プロマネとしてもありがたい!)

問題状況を早く解消させたいという「問題焦点コーピング」にこだわる人は、むしろストレスをため込みやすくなるわけです。

つまりは、変えられる状況であれば当然「問題焦点コーピング」を行うことは大事なのですが、変えられない、変えられそうもない状況であれば「情動焦点コーピング」を行うほうがよい場合も多いのです。

「状況に応じて最適なコーピングを選べる」、これがストレスコーピングの理想です。
「いつでも解決に向けて突き進む!」ばかりではうまくいかないことも多々あります。「ストレスを感じたらお酒を飲む!」ばかりでは体にもよくありません。
一つのコーピングで全て乗り切ろうとせず、「こんなときは人に話そう」「今回はパーッと気分転換」と、自分の中にコーピングのレパートリーを増やしておくことが大切なのです。

…だけど自分が普段どんなコーピングに偏っているのかよくわからないな、という方。

そんな方はぜひ、実際にストレスマネジメント講座へお越しください(笑)

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