さて年末の足音も聞こえ出し、ますます忙しい毎日を送っていらっしゃることと思います。
忙しいとイライラも溜まってしまいがち。
今回は、そんなイライラの「もと」について、少し考えてみたいと思います。
以下の文章の空欄に、あなたはどんな言葉を入れますか?
- 私が職場でイライラしてしまうのは、__________________ なときである。
- 私はメンバーの __________________ をみると不快になる。
これはストレスマネジメント講座で扱っているエキササイズの一部です。
受講生Aさんはこのように書きました。
- 私が職場でイライラしてしまうのは「部下が何度も指摘したミスをまた繰り返す」ときである。
- 私はメンバーの「周りの急がしさにも関わらずのんびりと仕事をする様子」をみると不快になる。
うんうん、この気持ちはよくわかりますね。
イライラしたり、不快になるのも当然と思えます。
しかし、今回はこの「当然」と思っていたことに、あえて「なぜ?」と考えてみましょう。
なぜ、部下が同じようなミスを繰り返すとイライラするのでしょう?
なぜ、のんびりと仕事をされると不快になるのでしょう?
さあ、そこで以下の問いに再び答えていただきましょう。
- 私がイライラする理由は __________________ から。
- 私が不快になる理由は __________________ から。
Aさんは、悩んだ末、以下のように書きました。
- 私がイライラする理由は「部下が自分の指導を軽んじているんじゃないかと思う」から。
- 私が不快になる理由は「メンバーが仕事に真剣に取り組んでいないんじゃないのかと思う」から。
なるほど。
Aさんはこう思うことで、イライラしたり、不快になったりするわけですね。
これは口にしていないけど心の中では言っている、いわば「心のつぶやき」です。
この「心のつぶやき」は、私たちがある出来事や状況をどうみているかという、心理学では「認知」と呼ばれる過程に該当します。
私たちは「部下がミスを繰り返す」という出来事が「イライラ」という気分を直接引き起こすと考えがちですが、実はその間に必ず「心のつぶやき(=認知)」が一枚噛んでいます。
そして私たちはイライラなどの「気分」には気づきやすいのですが、その気分の出所である「心のつぶやき(=認知)」には気づきにくいものなのです。
ところで、Aさんの1と2には、何か共通するパターンがないでしょうか。
・・・そうですね、1でも2でも、Aさんは他人の行動の理由を否定的に推論していることがわかります。「心の先読み」をしているんですね。
もしかするとその部下は、Aさんの指導は受け入れていても、応用力が低いためにやむなく同じミスを繰り返しているのかもしれません。
メンバーがのんびりして見えるのも、忙しいときこそあえて慎重に仕事を進めているからかもしれません。
でもAさんは、「こう思っているからだろう」と他人の行動の意図を否定的に推論して、その結果イライラしてしまっているのですね。
これがAさんがもっている「考え方のクセ」といえます。
この考え方のクセには、ものごとはこうあるべきだと考え、それに反する自他の行動を責めてしまう「べき思考」や、悪いことは拡大解釈し、いいことは過小評価する「誇大解釈・過小評価」、よくないことが起きるとなんでも自分のせいにしてしまう「個人化」など、他にもいくつかのパターンがあります。
ある出来事や状況について、本来様々な解釈や判断ができるはずですが、いつもなんらかの偏った方向の解釈をしてしまう、これが私たちの持っている「考え方のクセ」です。
たとえばサングラスをずっとかけていたとき、外して初めて「あっ、本当の空はこんなに青かったんだな」と思うことがありますね。
自分があるフィルターを通して景色を見ていることを忘れてしまうのです。
「考え方のクセ」もそれと同じで、自分が何らかの認知のフィルターを通して見ていることになかなか気づきにくいものです。
イライラしたり、不快になったりすることがあったら、「なぜ自分はイライラするのだろう?」と、少し立ち止まって考えてみてください。
あなたが知らず知らずかけていた、サングラスの色が見えるかもしれませんよ。