前回、私たちの行動は「結果」の影響を受けるものだという話をしました。自分の行動の結果が望ましいものであればその行動は「強化」されてよく行うようになり、その行動が身についたならば「学習」したとみなす考え方です。
今回は、さらに私たちがやる気を失うのも「学習」によるものだという説をお話ししたいと思います。
これはセリグマンという心理学者が1960年代に提唱した「学習性無力感」という説で、自分のいかなる行動も環境に対して無力であるという「あきらめ」が学習されると、他の状況下であっても行動を起こさなくなるという説です。
これは以下のような実験から明らかになりました。
犬を2群に分け、電気ショックを与えますが、A群は鼻でパネルを押すことによってショックを止めることができ、B群はどんな反応をしようとショックを止められません。
1日目にこのような経験を積んだ犬たちは、2日目は、A群・B群ともに仕切り板を飛び越えることでショックから逃げられるという、1日目と異なる状況下に置かれます。
するとどうなったと思いますか?
A群の犬は数秒のうちに仕切り板を飛び越えて逃げ出すのですが、B群の犬は大多数があきらめて座り込んだままという結果でした。
自分の行動が変化を引き起こすことを学んだ犬たち(A群)は、状況が違えど行動を起こしたのに対し、自分の行動が無駄であることを学んだ犬たち(B群)は、状況が変わっても自分からは行動を起こさず、無抵抗になってしまったのです。
このことは、人間に対する別の実験でも証明されました。
つまり、あなたの周りに「どうせむりでしょ」といって行動を起こすのを渋る人がいたとしたら、その人はこれまでに何度も「どうやってもうまくいかない」と思う経験を積んできてしまった人と考えられるのです。
では、やる気を失っている人にはどうしたらいいのか?
それは「新しい学習を成立させる」ことです。
「やっても無駄」から「やったら変わる」という認識へと再学習してもらえばいいのです。
困難に対してあきらめモードになっているメンバーがいるならば、コントロールできる部分やその方法を示唆したり、成果を上げた部分をきちんと評価してあげましょう。
- 「お客様からいつ変更要求が出てくるかわからないけど、変更手順を決めて提示しておくことはできるんじゃないか」
- 「○○部長は、目的の説明をきちんとすれば、最後まで耳を傾けてくれるよ」
- 「競合相手に負けはしたけど、この部分については評価されたよね」
このようにコントロール可能な部分や、うまくいった部分へのフォーカスを繰り返すことで、「自分が頑張れば変わるかも」という期待を持ってもらうことが大事です。
周囲に対する自分の影響力を信じられるようになれば、きっと「どうせ…」発言も減り、チャレンジ精神を取り戻してくれることでしょう。
「ほんとかなぁ、あの人ずっとああだし、どうせ変わんないんじゃないの」
…こう思った方、まずはご自身から始めてみてくださいね(笑)