さて、前回からプロブレムトークとソリューショントークの話をしています。
「愚痴の聞き役になったとき、どうやったら建設的な方向へ話を向けられるのか?」
その秘訣がプロブレムトークから、ソリューショントークへの切り替えだということでした。
前回は、同僚の愚痴への受け答えを、次のように変えてみたのでしたね。
(A)「うわー、大変だねぇ。確かにあの人は困った人だよね~」
(B)「うわー、大変だったねぇ。確かにあの人には困ったところもあるよね~」
さて、(A)と(B)の違いは2つあります。
1つ目は、そう、(B)では「大変だねぇ」が過去形になっていますね。
「大変だ」という現在形を使った共感と、「大変だったねぇ」という過去形を使った共感、ここにはどんな違いがあるのでしょうか。
もし「大変だねぇ」と聴き手が現在形で受け止めたとき、「現在も大変なのだ」というストーリーが、二人の間で共有されたこととなります。
一方、「大変だったねぇ」と過去形で受け止めたときはどうでしょう。
「確かにその時は大変だったけど、今これからは違うかもしれない」という可能性を暗示したストーリーになりませんか?
どちらも同じようにある時点では「大変だった」ということは認めつつも、今これからの展開可能性において違いが生まれてくるのです。
もう1つは、「困った人だ」が、(B)では「困ったところもある」という言い方になっています。
確かにクレームの電話を人に押しつけてあとは知らんぷり、というのは周囲の人にとっては「困った行動」には違いないでしょう。
しかし、そのことからそのAさんを「困った人」と表現したとき、「Aさん=困った人」というストーリーができあがり、そのストーリーに当てはまらない部分(つまり良い点など)は目に入らなくなります。
これを、「困ったところもある」とした場合はどうでしょう。
こうすることで「行動」と「人格」を切り分けていることとなり、困った行動は修正すべきだが、Aさんはいいところもある人だという可能性をはらんだストーリーとなります。
このように、一見ほとんど同じように見えますが、この小さな言葉遣いの変化が、ストーリーの組み替えを生んでいるのです。
このようにして、解決に向けた小さな歯車を動かしていくのが、ソリューショントークといえます。
同僚がある程度話してスッキリした様子が見えた後には、こんな会話も試してみてください。
あなた:
「確かに、Aさんには今よりも自分で考えるようになってほしいよね。まぁ、でもいきなりは難しいだろうからさ、すっごく小さなことでAさんが自分で考えてやれそうな仕事って何かある?」
同僚:
「え~あるかなぁ。まあ、次の飲み会の場所を決めるぐらいならやれるんじゃない?」
あなた:
「ああ、いいじゃんそれ!『あなたに任せるよ』って言ってやってもらえば?」
同僚:
「はは、そうだね。言ってみるか」
さあ、ここではソリューショントークへの切り替えを行っています。
まず、「自分で考えてくれない」という嘆きを、「自分で考えてほしい」という希望へと語り直しました。
裏返して言語化することで、愚痴が「解決を望んでいること」へと変わり、そうなると建設的なステップを考えることへとつながっていきます。
もう一つ、解決に向けた「スモールステップ」を求めました。
いきなり「すべて自分で考えられる人間になってもらう方法」を考えようとすると、到底無理なことに思え、諦めてしまいそうになります。
ところが「状況を前進させる小さな一歩」ぐらいなら、何かは思いつくのではありませんか?
飲み会の場所選びを任されたAさんは、不安でいっぱいかもしれませんが、選んだお店を周囲から褒められたなら、「私のチョイスが認められた!」と自信がつき、次から少しずつ自分で考える行動も増えてくるかもしれません。
小さな変化は、大きな変化をもたらします。
ドミノ倒しは、最初のドミノを倒せばいいのです。
状況を変えるために、一つ一つのドミノを倒して回る必要はありません。
この「語り直し」や「スモールステップ」は、ソリューショントークの一つの例です。
ソリューショントークのバリエーションはほかにもありますが、こうして「解決を語る」ことで、実際に解決を創造していくのがソリューショントークです。
さあ、次に愚痴を聞くことがあればチャンス!ソリューショントークへの切り替えを図り、いったいどんな解決が生まれてくるのか、チャレンジしてみましょう!