さて、今回はコミュニケーションのストレスを減らす話題をご提供しましょう。
名付けて「ああ言えばこう言う」脱却法。
自分の言い分が絶対筋が通っているはずなのに、相手はなんとしてもそれを承諾しようとしない。なんて分からず屋なのか、と腹を立てた経験は一度や二度はお持ちですよね。
そこではいったい何が起きているのでしょう。
コミュニケーションでは、「言葉のレベル」と「心理的なレベル」の2つのメッセージが交わされています。
この「言葉」のレベルのメッセージと、「心」のレベルでのメッセージが食い違っているとき、私たちは「ああ言えばこう言う」状態に陥りやすいのです。
「言葉」と「心」が食い違っているとはどういう状態をさすのでしょうか?
例えばこんな感じです。
あなた「なんか怒ってる?」
相手「怒ってないよ!」(語気荒く、眉根が寄っている)
このやり取りで、言葉通り「あ、怒っていないんだな」と安心する方はいませんね。
あなたは「いやいや怒ってるんじゃん」と理解するはずです。
このように私たちは、表面上の言語レベルと、心理レベルで異なる2つのメッセージが来た場合は、常に心理的なレベルのメッセージを聞き取っているものなのです。
ではこれが部下と上司のやり取りになったらどうでしょう。
部下「今期はこの方針で行くと期初にちゃんと決めましたよね」(眉根をギュッと寄せながら、鋭い目つき、責めるような口調で)
上司「状況が変われば方針が変わるのは当然だろう」(苦虫をかみつぶしたような顔で、見下すような口調で)
部下「だからといって今から変えたら現場は混乱しますよ」(同上)
上司「やり方を変えなきゃ結果は目に見えているじゃないか」(同上)
部下「そうでしょうか? うちはこれまで…(続く)」
このような上司と部下の攻防、皆様の会社でも繰り広げられていませんか?
お互いに一歩も譲らず、場の雰囲気はどんどん険悪になっていき、一触即発…というところですね。
ここでは上司も部下も言語レベルでは一見筋の通ったことを言っています。
ところが実際に相手が受け取っているメッセージはこうです。
部下「あんたはなんていい加減なんだ! 思いつきでものを言うにもほどがある!」
上司「お前はなんて浅はかなのか! 一度決めたらそれでいいと思っている!」
さあ、あなたはこのメッセージ、素直に受け取ることができますか?
・・・できませんね。「あなたはいい加減である」「あなたは浅はかである」というメッセージを投げつけられたまま、黙っていられるわけがありません。
かくして、私たちは「ああ言えばこう言う」状態に陥るわけです。
なんとしても議論に勝つことで、その裏面に隠れた心理レベルのメッセージごと、相手に「お返し」しようとするわけです。
では、このようなお互いに不快な「ああ言えばこう言う」状態から降りるにはどうしたらよいのでしょう?
それには、自分は裏面で違うメッセージを出していることに”気づく”ことが第一です。
私たちはついつい、言葉のレベルのメッセージさえ筋が通っていれば、相手は受け入れるはずだと思い込んでしまいます。
ところがその裏で、「このロジックの正しさをわからないあなたはバカだ」などと思い続けている限り、相手はそのメッセージに対して「その通りだ」とはうなずかないわけです。
自分が心理的レベルで相手の価値を貶めるようなメッセージを発していることは、さらさら気にとめないでしまうのですね。
このように自分が知らず知らず発してしまっていた心理的なレベルでのメッセージに気づいたら、「おっといけない」とその気持ちはひっこめましょう。
人間は「心理的レベル」のメッセージには面白いほど敏感です。あなたが気持ちを切り替えたら、それはすぐに相手に伝わり、ヒートアップした空気が一気に下がることが体感できるはずです。
さあ、あなたの心の声がどうなっているのか、いつも目配りしつつ、コミュニケーションにチャレンジしてみてくださいね!