さて、今回は「褒める技術」についてお話ししたいと思います。
研修で褒めることの大事さをお伝えすると、「褒めるのが苦手で…」とおっしゃる方の多いこと!
そう、褒めることも、一つのコミュニケーションスキルであり、スキルは磨く必要があるのです。
社会人経験を積むうちに、説明やプレゼンがうまくなっていったように、褒めることも経験で磨かれていきます。最初からうまい人はいませんし、やらなければ一生うまくなりません。
さあ、今からでも遅くありません、褒める技術を磨いていきましょう!
では褒めるときのコツです。
「褒める」行動は、「見つける」と「伝える」から成り立っています。
よくある悩みは「褒めるところが見当たらない」というものですが、褒めるところは、見つける気にならないと見つかりません。
「褒め言葉は『小は大を兼ねる』」という言葉を覚えておいてください。
小さいことほど、褒める効果は高いのです。
誰もが目につく大きな美点をほめても、当人にとっては当たり前で、インパクトは小さなものです。
ところが誰も気がついてくれなかったような、小さなことに目をとめて褒めたならどうでしょう。
「こんな細かいところにもちゃんと気づいてくれるなんて!」と感激もひとしお、それに気づいたあなたに対する評価もグンとアップします。
「小さなことこそ見つけてやるんだ」と思って観察するようにしてみましょう。
「こんな小さなことに気づけて自分はすごいなぁ」と、ついでに自分も褒めることもできますよ。
そしてもう一つが「伝える」でしたね。
「ここがいいな」と心の中で思っていても、口にしないと相手には伝わりません。
「ずっと評価していたことを、あるときたまたま口にしたら、思いがけず大喜びされて驚いた。自分が評価していることを、相手はとっくにわかっていると思っていたけど、実は違ったんだなぁ」という経験をお話しくださった受講生の方がいらっしゃいました。
そうなんです、せっかくいい点を見つけていても、それを心の中に秘めているだけでは、相手への効果はゼロです。
ちゃんと口にすることが必要です。
伝えるときは、大げさに褒める必要はありません。
「素早い対応だね!」
「A41枚にまとまっていていいね」
「さっきの説明はわかりやすかった」
など、あなたが受け取った事実を伝えれば、それで十分褒め言葉になります。
また、「後で言おう」と思っても、「後で言った」ためしはないはずです。
気づいたときに、すぐ伝えることを意識してください。
ホットなときこそ、響くときでもあります。
ちなみに、褒められるときにもコツがあります。
日本人は特に、「謙遜」を美徳とするところもあり、素直に褒め言葉を受け取ることに馴れていません。
研修の場でも、「いやいやそんなことは…」とか、「いえいえ私よりあなたのほうがよっぽど…」とか、「普段はこんなんじゃないんですよ」などといって、褒め言葉を受け取ろうとしない人が続出します。
ですが謙遜することとは、せっかく相手が良いところを伝えてくれようとしているのに、「ノーサンキュー」と突っぱねているようなもの。
褒めたほうにしてみれば、宙ぶらりんのプレゼントをなんとか受け取ってもらうべく、「いえいえ、だってさっきもほら、こんなふうにおっしゃっていて…」など、さらに言葉を重ねることとなり、思わぬ一苦労をすることになります。
こんな押し問答を何度か繰り返すと、褒めたほうはだんだん居心地が悪くなり、この後も「褒めよう」という気が起きなくなってしまいます。
そこで照れくさいとは思いますが、もし褒め言葉をもらう機会があったら、こんなふうに言葉でしっかりキャッチしてください。
「ありがとうございます」
「嬉しいです」
「私もそう思ってました」
顔を輝かせながらこう言ってしっかり受け止めてくれると、褒めたほうもとても嬉しくなり、「また褒めよう!」と思うものです。
こうして、「褒める」「褒められる」のよい循環が、チームや職場に生まれればしめたもの。
ぜひ皆さんが先頭に立って、「褒める」「褒められる」の輪を始めてみてください!