今回は、日本映画の中でもヒットメーカーであった伊丹十三監督の代表作のひとつ「マルサの女」を取り上げてみたいと思います。
主人公である女性、板倉亮子は、当初は港町税務署の調査官であったが、そこでの手腕が認められ、マルサ(東京国税局査察部)の査察官に抜擢されます。
そこでターゲットになったのは権藤商事の社長。裏社会とつながる多数の部下や特殊関係人への裏工作を一つ一つ崩して、大がかりな脱税をいかに暴いていくのか。その過程がスリリングに描かれ、大ヒットした映画です。
権藤の自宅へ強制査察に入るシーンでは、当然ながら、様々な場所に情報や証拠を分散させているため、同時に関係各所へ査察に入らなければ、重要な証拠書類を隠滅されてしまう可能性があります。そのため、100名を超える査察官が各所に配備され、同時に計画した時刻に査察に入る、それがマルサの作戦です。
さて、皆さんが今行っているプロジェクトの規模はどのくらいでしょうか?多くのプロジェクトは、複数人でチームを組んで取り掛かっていることが多いのではないでしょうか。一人でできることは、実際には限られています。しかし、チームになれば「君はこれをやってくれ」「あなたにはこの仕事をお願いしたい」と、それぞれに役割を振り分け、それぞれの作業を各人が同時並行的にこなしてくれることで、大きな仕事を成し遂げることができる、これがプロジェクトの醍醐味でもあるはずです。
となれば、そうしたチーム・メンバーの役割、作業分担はどのように割り振られているでしょうか?各チームに、各担当者に、期待している仕事内容は明確に伝わっているでしょうか?もちろん「これまでもずっと一緒にやってきたチームだからそんな細かいことは言わずとも、ツーカーの間柄」で上手くいくチームもあるでしょう。しかし、そうはいかないメンバーもいるとしたら?
そんな時に使うツールとしてPMBOKの中で説明されているのが、OBS(organizational breakdown structure)やRBS(resource breakdown structure)です。これは、WBSのワークパッケージと組織もしくは資源(リソース)を紐づけて「どの組織が、どの資源(リソース)がそのワークパッケージを担当するのか」を明確にするツールです。それぞれの役割が明確になり、作業がわからない……、無駄な作業をやっている……といったことを避けることができます。
日本では「現場作業が上手くまわっていない時、必要だと思ったら、すぐにやりなさい」などという「あうんの呼吸」で上手くいっていた時期があったかもしれません。しかし、それぞれがいっぱいいっぱいの状況下では、きちんと業務範囲、担当範囲を明確にしてあげることが必要ではないでしょうか。
そうして各担当者が、それぞれの役割を全うすることによって一つの成果を出すための集団、それが「チーム」です。そのチームの力を最大限に発揮するためにも、どこかで役割を明確にして進めていくことは、決して無駄にはなりません。
「マルサの女」はその後「マルサの女2」もつくられた30年以上も前のヒット作ですが、面白い映画は今見直しても、十分に鑑賞に堪えるものです。
それではまた、次回をお楽しみに。