さて前回は、「自分の感情に気づこう」ということをお話しました。
今回は、それを「どう表現するか」ということについて触れてみたいと思います。
感情は、コミュニケーションにおいて非常に「インパクト」のあるコンテンツです。
「ロジック」は、頭での理解を促しますが、「感情」は心での納得を促します。
ですので、「感情」の抜けた説明は、受け手にとってみれば「言いたいことはわかったけど、どうも心が動かない」ということになるのです。
ですから、「感情」をコミュニケーションにきちんと含めるのは、「これまでの行動を変える」といった相手の自発性を必要とする場合に、大変効果的なやりかたなのです。
とはいえ、インパクトのある内容だけに、取り扱いには「注意」も必要です。
たとえば、こんな状況下であなたはどんなふうに感情を表現したらよいでしょうか?
あなたは短納期のPJを担当しており、部下の鈴木君にある作業を依頼していました。
何かあればすぐ相談するように言ってありましたし、進捗を聞いたときも「大丈夫です」とのことだったので、あなたは順調に進んでいるものと安心していました。
ところが中間レビューの際、予定の1/3も進んでいなかったことが明らかになったのです。
こんなとき、あなたが感情が高ぶるままに鈴木君に口を開いたとしたら…
大きく息を吸い、目を三角にして、ドカン!
「おい、なんだよこれ!!」
「もう、どうすんだよ!!」
確かにこれらの言葉にはあなたの感情がにじんでいますが、こんなふうに怒鳴りつけられた鈴木君は、すっかり萎縮してしまい、あとの言葉はとても入っていかないでしょう。
感情は、「感情的に」表現してしまうと、相手は受け止められません。
力いっぱい投げつけられた球は、相手は手に取ることができず、硬く殻を張ってひたすら身を守るか、こちらもお返しにぶつける球を探し出すことになるでしょう。
感情は、相手が受け止めやすいよう、「そっと手渡す」ようにしましょう。
先ほどのセリフに込められた感情を、改めて丁寧に言葉にしてみたらどうなるでしょう。
「おい、なんだよこれ!!」→「順調に進んでいると聞いていたので、驚いた」
「もう、どうすんだよ!!」→「このあとの進捗が間に合うか不安だ」
このように言ってもらえれば、鈴木君もあなたの気持ちを理解し、自分の状況も正直に話し、このあとのリカバーにも前向きに取り組んでくれることでしょう。
他にも、
- 「さっきのお客様への説明、ハラハラしながら聞いていたよ」
- 「悪いけど、午後の会議の準備で、焦っているところなんだ」
- 「どうしてこういうことになったのか、驚いているよ」
- 「このような状況になって、困っているんだ」
などなど、自分の心の動きを丁寧に言葉にできることは、周囲への影響力の大きいマネジャーにとって、大変な強みとなるスキルです。
感情が高まったときは、ただ溢れ出させるのではなく、名前をつけて、そっと手渡す。
こうやって、「感情」をあなたの味方につけてみてくださいね!
(バックナンバー第17回「コミュニケーションの『北風と太陽』」もご参考に!)