さて、私たちはつい出やすい言葉や、つい出やすい行動があるように、つい出やすい感情を持っています。
たとえばお客様と交渉をしている途中、お互いの言い分がぶつかり、緊迫した状況になったとします。
すると、そのときの感じ方は人それぞれです。
「なんて自分勝手なことばかり言い立てるんだ!」と怒りを覚える人もいれば、「もっと準備しておけばよかったのに、私はなんてバカなんだ」と後悔を感じる人、「これだから人と交渉するのはいやなんだ…」と憂うつを感じる人もいるでしょう。
このようなストレスを感じる状況で、あなたがいつもの「おなじみの」感情に浸ったとしたら、交流分析でいうところの「ラケット感情」かもしれません。
このラケット感情とは、「いろいろなストレス状況で経験される、なじみ深い感情であり、子ども時代に学習されたもので、成人の問題解決の手段としては不適切なもの」です。
つまり「あなたはすぐ腹を立てる」と言われやすいとしたら、それがあなたのラケット感情である可能性が高いわけです。
このラケット感情にはいくつかの特長があります。
1つには「問題解決の役に立たない」ということです。
上記の例でいけば、今ここで怒りに任せてお客様と怒鳴りあいをしたところで、あるいは後悔の念に浸って暗い顔をしてみせたところで、お客様との交渉がスムーズに進むとは考えにくいですね。
また1つには「自分自身への非生産的な口実となる」という点もあります。
「これだから人と交渉するのはいやなんだ…」と憂うつに浸ることに時間を使うことで、本来考えるべき「どうやってこの交渉をうまく進めるか」ということに取り組まずに済ませているわけです。
このような、ためにならない、不快な感情を繰り返し味わっているとすれば、それは見直してみる価値はありそうです。
私たちは、おなじみの感情に身を任せ続けることも、そこから決断して身を起こすこともできます。
おなじみの感情がまたやってきたことに気づいたら、あなたの中の「大人」の部分にスイッチを入れてみましょう。
「この怒りは/後悔は/憂うつは、私の役に立っているだろうか?」と考えてみるのです。
すると、「これはうまくないな」と気づいて、「それよりまずお互いの言い分を整理することが先だ」などとエネルギーが問題解決に向けられ、感情の波がスーっと引いていくことになるでしょう。
あなたの「おなじみ」の感情、長い付き合いかもしれませんが、少ーし距離をとりつつ、うまくお付き合いしていきましょう!