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第64回:「過剰適応」と「不適応」 

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さて、今回は「適応」ということについて考えてみたいと思います。

心理学では「環境の変化に応じて自らを変化させていく」ことを「適応」と呼びます。

たとえば新入社員なら、「学生」という環境から「社会」という環境に身を置くようになることで、これまでの夜型生活から朝型生活へ切り替えていったり、今までなら「わるいね!」と言っていたところを「誠に恐れ入ります」と言ったりするように自分を変えていきます。

こんなふうに「この環境ではこういう振る舞い方をすべき」という要請にうまく応えられれば「適応」ができたことになりますし、そうでないときには諸問題が生じます。

うまく適応できない場合、それは環境に問題がある場合もあれば、本人に問題がある場合もあります。

本人に問題があるとは、つまり置かれている環境に適応するだけの対処スキルをまだ獲得できていない、ということです。

「~~だよね?」と“タメ口”を先輩にも構わず使ってしまう、みんなが納期に追われているときも「私の分の仕事は終わりましたから」とばかりに一声もかけずに帰ってしまう、といった感じです。

うまく適応できていないと、周囲からは「なんだアイツは」という目で見られたりして、本人も居心地が良くないですから、不満やゆううつ感が高まり、最終的にはその環境からドロップアウトしてしまうことにもつながります。
これは「不適応」という問題です。

この場合は、「組織の中でうまくやっていく上では、ちょっと自分も変わらなきゃなんだな」ということを理解・学習していくことが必要です。自分の主義主張も大事だけれども、周りを見て、少しは引っ込めたり合わせたり…ということを覚えていく(=対処スキルを身につける)ことで、適応できていくわけです。

一方で、環境に問題がある場合とは、それはどんな人でもうまく適応できないような過酷な環境である、ということです。

「毎日15時間働け」とか、「どんな理不尽な扱いをされても黙っていろ」とか、これではどんな人がそこに身を置いたとしても心身を壊してしまいます。
この場合は、環境が変わる、あるいは個人としてはそのような環境からは身を離す必要があるでしょう。

ところがこんな状況下にもかかわらず、とにかく耐え忍び続けてしまったり、あるいは「そこそこ力を抜いて応じる」ということができずに、100%、120%の力で環境の求めに応えようとしてしまったりすると、いずれ心身の調子を崩してしまうのです。

またはたとえ環境的には通常の範囲であったとしても、「成果を完璧に挙げなければ」「周囲の期待に完璧に応えなければ」と考えやすい人だと、自分で自分を追い込んでしまい、やはり同じ事態に至ります。

これらは「過剰適応」、つまりやりすぎ、という問題です。

こんなふうに、私たちがある環境下で居心地よく、長く健康に過ごすためには、「まったく合わせない(私は私のやり方でいく)」でもダメですし、「合わせすぎる(自分を押し殺す、頑張りすぎ)」でもダメ、「適度に合わせていく」というバランス感覚が重要になるわけです。

皆さんはいま、どんなバランスで立っているでしょうか?

これから新社会人を迎える季節です。
新しい環境では、「いいバランス」を見つけるまでは試行錯誤が必要です。
ちょっとバランス感覚が悪い人がいても、徐々にいいバランスを見出していくものですから、温かい目で見守ってあげてくださいね!

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