部下や知人から相談を受けたときなど、あなたはどのように振る舞っているでしょうか。
たとえば新入社員から「辞めたい」という相談が持ち込まれたとします。
当然あなたは驚き、なんとか思いとどまってもらいたいがために、「まだ早いんじゃないか」とか「せめて3年は一つの職場で頑張るべきだ」などと説得しようとするかもしれません。
すると相手は「わかりました、もう少し考えてみます」とは言ったものの、それからは何を聞いても「大丈夫です」としか返してくれなくなった、なんてことが起きたりします。
こちらは必死に相手のためによかれと思うことを伝えたのに…。
なにか、相手の心にはうまく届かなかったようです。
そこで、相談に乗るときは、2つのスタンスを切り替えることを心がけてみてください。
1.最初は「保護者」のスタンスで
相談は、悩んだらすぐにしようとすることでしょうか。おそらく違うはずです。
自分の中でなんとか処理したかったけれど、残念ながらうまくいかなかった。
それでも「助けてほしい」とか「もうダメ」といったヘルプや本音を出すのは、かなりのためらいの末、ようやく勇気を出して行うことです。
ですので、まずはその気持ちを受け止めてあげましょう。
このステップがないままに、「で、君はどうしたいのよ」などと問題解決を急がれると、思い切って相談してきた人は、自分がみじめで、突き放されたように感じてしまいます。
「本当に大変だったね」
「そんな中よく頑張ってきたね」
「よく話してくれたね、ありがとう」
このように、いわば保護者のような気持ちで、相手のつらさに寄り添うような言葉を伝えると、相手は「ああよかった、わかってもらえた」と大変安心できます。
苦しいときに頼った人から、「つらいのは皆同じだよ」とか「そんなことぐらいで」と言われたりせず、理解してもらえたのです。これはうれしいものです。
こうして心細かった気持ちが満たされ、安心できると、相手は建設的に解決策を考える気持ちに移りやすくなります。
2.「大人同士」のスタンスへ
次は解決策を探っていく段階に移ります。
このとき気をつけたいのが、今度は自分がいつまでも保護者サイドにいて、相手をさながら「子どもポジション」に置いたままで、コミュニケーションを続けないということです。
相手が困っていると聞かされると、「何とかしてあげねば」と思い、矢継ぎ早に「こうしたらいい」とアドバイスをする人も多いでしょう。ところが、これではせっかくのアドバイスが届かないこともあるのです。
「まずは○○さんに相談してみたら?」と言うと、「ええ、でもそれはこういう理由で難しいんです」となり、「じゃあこうするのはどう?」と言うと、「前にそれはもう試したことがあるんですよ」など、何を言ってもはねつけられてしまい、最後は相談された側が無力感や怒りを味わう――こんなやりとりが時に生じます。
このように、しばしば相手も無意識にですが、「ほら、あなたにも私の問題を解決するのは無理でしょう」という結論を導こうとして、あなたのどんなアドバイスも結局受け入れない、というやりとりが生じます。(ちなみに、このような双方が後味の悪い気持ちになるやりとりを、交流分析で「ゲーム」といいます。)
そこで、第2段階では、相手を「大人」と見なし(当たり前ですが)、対等なスタンスで向かい合い、相手から解決策を引き出すようにしてみてください。
「あなたはこれまでどうしてきたのか」
「どんなことならやれそうなのか」
「どうなっていたらとりあえず前進なのか」
もちろん、その話し合いの中ではあなたからの提案も出していただいて構いません。
大事なのは、問題解決をする主体はその人自身であり、最終的にどうするかの決断も本人が行うのだ、という姿勢を明らかにすることです。
保護者のように相手を安心させる部分と、相手を能力のある人間だと認めて向き合うこと。
この2つのスタンスをうまく使い分けてみてくださいね!