今回は、よほどお若い方は別として、このメールマガジンをお読みの方、かつ映画好きの方なら、まずご存知の映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を取り上げます。
主人公「マーティー」役のマイケル・J・フォックス、「ドク」こと科学者役のクリストファー・ロイドをご存知の方も多いかと思います。
映画では、ドクが自動車を改造し、タイムマシンを開発。その実験中、あるトラブルに巻き込まれ、マーティーが30年前の1955年にタイムトラベルしてしまうことに。しかし片道で「燃料」を使い果たしてしまい、元の時代に帰れなくなってしまう。1985年に戻るためにマーティーは様々な施策を打つわけですが、そんなさ中、マーティーの実の父母(30年前ですから、1985年のマーティーと同世代)を見つけます。この、将来はマーティーの母となるうら若きロレインが、こともあろうに未来の息子に恋心を!しかしこのままでは、ロレイン智正しい父親になるべき人との結婚がなくなり、マーティー自身が誕生しないこと(タイムパラドックス)になってしまいます!どうやってこの状況を「正しい未来」に戻していくのか!?
映画の中で、マーティーが何度か取り出して効果を確認するものがあります。それはタイムトラベル前から持っていた1枚の写真。未来から来たマーティーが引き起こす1955年での行動に応じて、その写真の中に映っている「誰か」が薄れている事に気付くのです。どんどん薄れている…という事は、この行動による効果の先にあるのは、自分が生まれない世界に近づいているという事実!これは一大事です!
このSF娯楽映画をどのようにマネジメントにつなげるのか。そのカギは「写真」です。
プロジェクトマネジメントを体系としてまとめたPMBOKには「10の知識エリア」という考え方があります。その一つが「リスク」という知識エリア。プロジェクトにおけるリスクとの対峙の仕方、リスクに対してどう取り組んでいくかの計画を立て、リスクをどう扱うか、対策をどう打つか…といった、いくつかのプロセスで構成されています。
そのプロセスのひとつが「リスクの監視」。これはいくつか検討した対策を打っていく中で、施策を行ったとしても、本当にその効果が出ているのかどうか施策の結果をきちんとウォッチし、効果を確認していくプロセスです。
リスクへの対応は、リスクの洗い出しや対策の検討など、実際、多くのプロジェクトにおいて実施されています。そうして仮に「今回のリスクに対しては、この対応策を打っていくことにしよう」と決まったとして、その対策や施策が現場において、きちんと打たれているでしょうか?そしてその効果は確認されているでしょうか?やり方は決められても「現場工数が足りなくて……」と言い訳をして、打てていない現場はありませんか?
「もちろん、決められた対策は打っています!」という現場でも、その対策の「有効性の確認」はどうでしょう?期待しただけの効果が上がっていなければ、その施策の意味は薄れるばかり。無駄工数につながりかねません。「決められた行動をやっているだけ」「言われたことをしているだけ」「作業をしているだけ」で効果が上がっていない場合、それは無駄作業ではないでしょうか。折に触れ、効果を確認しながら活動を行う。不確実性に対処する上で、効果確認が大切なことは言うまでもないでしょう。
この映画の中で、マーティーが写真を都度見直しているこの行為は「過去の世界での行動が、自分がいた未来に向かっているだろうか?写真の中の自分は、薄まっていないだろうか?きちんと存在しているだろうか?」といった、対策に対しての効果を確認している事につながります。写真を見直すことではじめて、行動した結果による効果が確認できている、自分のいた未来へつながりはじめているという事です。
実際のプロジェクトのリスクにおいて、場合によっては、リスクに対する実施対策の効果が期待したほどではない場合もあります。本当にその効果があまりないような場合、再度対策を見直し、別の策で挑むべきであり、そのためにも「現対応策による効果を監視」しておく必要があるわけです。
すでにご存じの方も多いと思いますが、映画バック・トゥ・ザ・フューチャーは三部作。タイムトラベルを扱った映画の中でも、非常に面白い娯楽作品の一つです。今まで見たことがない方は機会があればぜひ一度、久しく見ていない方も、この機会にもう一度お楽しみください。元気がもらえること請け合いです。