例えば、あなたが多忙な中で、それでもなんとか引き受けた案件について報告したところ、上司から「なんか進め方が雑だなぁ。これぐらいもっとちゃんとやれないの?」と言われたとき。
例えば、クタクタになって帰宅したあと、パートナーと小さなことから口論になり、「あ~あ。だからあなたは〇〇なのよ」と言われたとき。(○○には、あなたの地雷を入れてみてください)
あなたの心臓はドキドキと脈打ち、息が荒くなり、握り締めたこぶしがブルブル震え出すかもしれません。
周りの人があなたを見たら、目がランランと光っていることでしょう。
そして沸き上がる感情に身を任せて、後先のことなど考えず、相手を全力で叩きのめすべく、思いつく限りの罵倒を始めるかもしれません。
こんなふうに、痛烈な侮蔑を込めたメッセージを投げつけられたときなど、私たちは強い感情にハイジャックされた状態になります。
情動が氾濫を起こしてしまい、理性が感情に乗っ取られてしまっているわけです。
平常では理性が勝っていても、いざというときは感情は強いものです。
なぜこんなにも感情は強いのでしょうか。
それは生き物としてのサバイバルには、感情の指令に従うことが不可欠だったからです。
例えば天敵が現れたときに、「恐怖」に駆られることで「すぐ逃げる」ことを、ライバルが現れたときに、「怒り」に駆られることで「全力で闘う」ことを、身体に促したわけです。
心拍数や呼吸数をあげて全身にすばやく酸素を巡らせ、瞳孔を開かせて多くの情報を取り込み、闘ったり逃げたりがうまくいくように、体を「闘争/逃走モード」に切り替えたのですね。
こんなふうに、かつては私たちが生き延びる上では非常に効果的だった仕組みも、現代人の私たちにとっては、人間関係や居場所を破壊するような、厄介な結末を引き起こしかねません。
感情にハイジャックされたときはどうしたらいいのでしょう。
一つは、このような「ハイジャック現象」が起こる、ということを知っておくことです。
とくに、上司や配偶者など、自分にとって無視できない人物から攻撃されたときは「ハイジャック」が起こりやすいですから、それを知っておくといいでしょう。
もう一つは、「時間を置く」ことです。
強い感情が沸き上がったとき、間髪をおかずに反応すると、いい結果にはなりません。
怒りの衝動は6秒でピークを過ぎると言われています。
心の中で6秒数える、その場を離れるなどして、理性の復活を待ってみましょう。
あなたの理性は必死で、衝動にストップをかけ、より効果的な対応を模索してくれるはずです。
そうして、理性と感情が手を結べると、より建設的な対応に繋がっていくはずです。
サバイバルの時にはありがたく、そうでないときには少し場所を譲ってもらえるように、感情とうまく付き合っていけるといいですね!