前回は、ポジティブな言葉かけと、ネガティブな言葉かけの「比率」についてお話ししました。
今回は、ポジティブな言葉かけと、ネガティブな言葉かけの「順番」についてお話ししたいと思います。
たとえば皆さんが自分のメンバーに、新しい仕事を任せて、あなたはそれを見守る役回りだとします。
お客様先へ訪問した際の営業トークとか、提案書作成とか、何でも構いません。
その訪問後の振り返りや、提案書のレビューの際、あなたは「良かった点」と「改善点」、どちらを先に伝えるでしょうか?
この「順番」はものすごく大事です。
これからは、必ず、必ず、「良かった点」から伝えるようにしてください!
この点は私自身が、研修中に一番気を付けているところです。
たとえば研修でコーチングのロールプレイをしてもらうと、ティーチング的なやりとりに終始してしまう人がけっこういます。
コーチ役をやると、悩みを相談してきた相手役の人に、「こうしたらどう?」「これやってみたら?」というふうに、自分の経験値から、その人にあれこれ答えを与えたくなってしまうんですね。
そのようなやりとりを、オブザーバーとしてはたで見ているともうダメです。
「ああ、相手役の人、顔つきが渋くなってきたよ…」「さっきからずっと、コーチ役の人がしゃべりまくってる…」
見ているこちらは、フラストレーションが溜まって仕方がありません。
こんなロールプレイを見終えたあとの「振り返り」となると、それはもう、ダメ出ししたいところが山のようにあるわけです。
待ってましたとばかりに、「ちょっとしゃべりすぎてましたね~」とか、「あれだとほとんどティーチングかな~」とダメ出しをしたくなります。
しかし! ここが一番センシティブなところなのです。
ここでのフィードバックの仕方が、今後受講生がコーチングをやる気になるかどうかの分かれ目といってもいいかもしれません。
コーチ役に挑戦した人は、なんていっても「頑張った」のです。
普段やっていないことを一生懸命意識しながら、なんとかやり終えたところなのです。
人の目がある中で、緊張しながらやって、どう見られたんだろう…と不安でいっぱいなのです。
いろいろ言いたいことはありますが、そこはグッとこらえて、まずは「表情が豊かだった」「あの言い回しがナイスだった」と、良い点を先に伝えるのです。
「あれがダメだった」「これがイマイチ」と、マイナス点を先に聞かされると、「あんなに頑張ったのに自分は全然ダメか…」と自信を丸ごと失いかねません。
人は基本的に、自分自身を有能だと思っていたい存在です。
だからこそ、「あなたはダメ」という批判のメッセージはなかなか受けつけにくいのです。
見ている側は「ああ、もっとこうするといいのに!」と思って、よくなってほしい一心で、改善点をたくさん先に伝えてしまいがちですが、受け取ってもらえなければ元も子もありません。
まずは十分「良かったところ」を伝えて、本人に安心してもらった上で、「こうするとさらにいいよ」というメッセージは出すべきです。
また、そうやって「改善点を伝えたいなら、先に良い点を伝えなくてはいけない」とルール化しておくと、「悪い点」ばかりに目が向いていた自分に気づき、「良い点」を見出す能力が自分にも備わってくるのです。
ついつい先に「改善点」を伝えがちだな~と思った方。
ぜひこれからは、必ず先に「良かった点」を伝えるように心がけてくださいね!