第5回は、河田さん(仮名)からの悩みです。
河田さん 36歳/PM歴9年/ITプロジェクトのプロジェクト・マネジャー
私は総人員4~5人の比較的小さなプロジェクトを任されています。
その見積のことで悩んでいます。
ただでさえ、少なめの見積りで、のちのち予算が足りなくなることが多いのに、上司は問答無用で予算を削ろうとしてくるのです。
これでまた最後に予算オーバーになって、叱責されるかと思うとたまりません。
どうしたらよいでしょうか。
回答
それは困りましたね。そのような状況ではストレスがたまるのも仕方ありませんね。
問答無用で予算を削ろうとする上司に対抗するには、やはり見積に自信をもつ(=精度をあげる)ことが必要です。
ここでは、どうしたら工数見積もりの精度を上げられるのかを考えてみましょう。
私がよく紹介する見積精度向上の4つのポイントは、以下の4点です。
- 正確なWBSを作る
- わかる人が見積もる
- 過去のデータを活用する
- 適切なバッファを確保する
今回は、中でも特に見落としがちな2と4について詳しく見てみましょう。
2.わかる人が見積もる
見積もり作業を行うのはリーダーやマネジャーの仕事だと思っている、あるいはメンバーをわずらわせたくないという思いから、自分1人で見積り作業をしていませんか。
しかし、見積もり作業にはメンバーを加えることが大事です。
工数を見積もるときは、「業務の内容」がわかることが重要ですが、「作業を実施する要員の能力」も必要な情報ですね。
実は、要員の能力を一番知っている人は要員(メンバー)であり、要員を見積もり作業に加えることが見積精度の向上につながります。
さらに、要員を見積もり作業に加えるともう一つ大きなメリットがあります。見積に加わった要員は、見積に対してそれを守ろうとするモチベーションが高くなる、ということです。
4.適切なバッファを確保する
バッファは持ってはいけない(=甘い)という先入観を持つ人がいます。
しかし、リスクに見合ったバッファを持たない見積りはたいてい破たんします。
バッファを考慮した見積技法が3点見積と呼ばれるものです。
1つの作業に対して、何人日といった見積もりは1点見積です。
これに対して、楽観的には何人日、悲観的には何人日、もっともありそうな場合(最頻値)が何人日というように、3点を押さえるのが3点見積です。
悲観値から離れて楽観値に近くなるほど達成の可能性は低くなります。
楽観値が8人日、最頻値が10人日、悲観値が16人日なら、16人日を下回れば下回るほどリスクが高くなります。
個々の作業の見積りを厳しく(楽観値に近く)見積もると、予算の達成の可能性も低くなるので、予算を守るために相応のバッファが必要になります。
このバッファのことをPM用語で「コンティンジェンシー予備」といいます。
十分なバッファを確保するもあり、少ないバッファでチャレンジするのもありですが、プロジェクト・マネジャーとしては、リスクを把握した上で判断することが重要です。
「見積精度向上の4つのポイントを実施し、自信を持って上司と交渉する」
ぜひ、すぐにでもお試しください。